スペイン語文法ノート 英語なら1種類しかない「~した」という過去の事実を述べる表現。スペイン語では点過去と線過去の2種類があり、文章を作るたびにどちらを使えばいいのか悩むところ。その使い分けなどをまとめてみました。




その他の特徴について


Última actualización: 16 de abril 2016


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その他の特徴について

これまで「点過去」と「線過去」の違いについてざっと見てきましたが、補足として、「時制」という視点以外からみたそれぞれの用法の特徴についてまとめてみました。他のページで簡単に触れていることも含まれているため、繰り返しになる部分もあります。

線過去のあいまいさ
継続と完了の考え方でも述べていますが、過去のその時点(絶対的な時間)において完了していない「線過去」は、その時点を過ぎても、結局完了したかどうかがわからない、完了したかどうかはどうでもいい(問題にしない)という不透明さを含んでいます。

ところが、逆に、こういった線過去の「あいまいさ」を使って、相手に状況を察してもらうといった「暗号的な」効果を狙う場合もあります。こういう使い方ができるのはスペイン語のネイティブならではのことで、外国人にとってはなかなかむずかしい用法のようですが、「点過去」と「線過去」の本質的な違いを理解することで、使いこなすのも夢ではありません。

具体的な例を挙げてみましょう。わかりやすくするために、まず日本語で考えてみたいと思います。

「日曜日に京都へ行ったよ」
「日曜日に京都に行くつもりだったんだ」

日本語のネイティブなら、この2つの文章の違いがわかるはずですが、上の例文では、事実として確かに「京都に行ってきた」ということが一目瞭然ですが、下の例では、「何か予定が狂って行けなくなったのかな?」という推測が成り立ちます。もちろん、何らかの問題や事件が起きて行けなくなりそうになったが、結局、なんとか調整して行ってきたということもあり得るわけですが、こういった言い回しをすることによって、「何か起きたな」という暗黙のメッセージを伝えようとしているわけです。




これと似たニュアンスを表現する場合に、スペイン語では「線過去」を使います。

  El último domingo fui a Kioto.
  El último domingo iba a Kioto.

もうひとつ例を挙げます。あまり縁起の良い例ではありませんが、「京都に行ったか行かないか」といった、あまり大勢に影響のない話ではなく、解釈を間違うと大変なことになるような例です。

  Su papá murió anoche.
  Su papá moría anoche.

上の例文では、「昨夜、彼(彼女)のお父さんが死んだ」という事実になってしまい、下の例文では、「死にかけていた=危篤状態だった」ということになり、その後、持ち直したのか、それとも亡くなってしまったのかはわからない(聞いていない)といった意味合いになります。いずれにしろ、相手が「線過去」で話す場合は、その裏に隠されたメッセージがあるということです。




線過去を使ったていねい表現
英語でも、Can you...? というより Could you...? と過去形を使ったほうがていねいになりますが、人に何かを依頼するときの「ていねいな言い回し」として、「線過去」を使う場合があります。もちろん、この場合の時制は「過去」ではなく「現在」になります。

  Quiero pedirle su ayuda.
(助けて欲しいんだけど)
  Quería pedirle su ayuda.
(助けていただきたいんですが)




また、自分の意見などを述べる場合、ちょっと控え目に表現したいということがあります。英語でも、I would say...、 I would think... などと will の過去形を使いますが、スペイン語では「線過去」を用いて表現することができます。

  Creo que es una buena idea.
(良いアイデアだと思う)
  Creía que es una buena idea.
(良いアイデアではないでしょうか)




文章のリズム
「点過去」と「線過去」の比較物語の過去でも触れていますが、「点過去」を使った文章には軽快でリズム感があり、逆に、「線過去」はゆっくりと落ち着いた感じを与えます。これは、それぞれの活用形を見てもわかりますが、音の響きも関係していると思われます。

しかしながら、これも物語の過去のところで述べましたが、どちらか一方を多用すればいいというわけではありません。厳密な時間的な係りを表現できないということはもとより、リズム的にもバランスの取れない文章展開になってしまいます。

「点過去」を多用すると、次々と事柄が導入され、軽快なリズム感は出るのですが、反面、「その状態はどうだったのか」という描写に欠けるため、軽薄で文章に深みがなく、味気なさを感じさせることになります。また、「線過去」ばかりを使うと、ゆったりとした重厚感は出るかもしれませんが、退屈さや停滞感のある読み物になってしまいます。新しい過去の事柄を導入する「点過去」がない(少ない)ために、話がなかなか前に進まないということになります。

日本語においても、かって、NHK総合テレビで放映されていた「プロジェクトX」という番組がありました。「~した、だった」を連発した文章表現が新鮮だったのですが、もし、ずっとあの口調で最後まで語られるとしたらどうでしょう。何か物足りなさや単調さを感じてしまうと思うのです。やはり、「~なのである」や「~と言われる」といったリズム感の異なる表現と組み合わせることが大事だと思います。

スペイン語で表現する場合も、時間的な関係も考慮しながら、「点過去」と「線過去」を効果的に織り交ぜていくことが、良い文章を作るポイントだと言えるでしょう。