「通弁」クリエイティブ翻訳

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クリエイティブ翻訳のプロセス

なぜ「自然」な表現になるのか?

よく「木を見て森を見ず」と言いますが、文章の個々の部品(コンポーネンツ)を表面的に訳出することのみに捉われていると「直訳」になり、全体として通じにくい文章になってしまいます。

「通弁」のクリエイティブ翻訳では、木を見ながら森を完成させていくバランス感覚を維持しながら作業を進めていきます。また、原文に忠実とは?でも書いていますが、「トップダウン」と「ボトムアップ」の視点をうまく組み合わせることだとも言えます。

下の図は、「通弁」のクリエイティブ翻訳を行う際のプロセスを表したものです。こういったことを個々のステップに分けて行うというのではなく、すべてを同時に、「混然一体のハーモニー」を創りだす感覚で進めていきます。

クリエイティブ翻訳のプロセス

まず、原文をよく読み込むことで情報の核心をつかみ、「どんな目的で何を伝えようとするものなのか」という情報の性質や位置づけを特定します。情報の特性がつかめたところで、翻訳元の文章構造をいったんクリアし、翻訳先の言語において実際に使用されている類似した実例をストックから探し特定します。

つまり、翻訳元の文章をそのまま移し替えようとするのではなく、翻訳先の言語で「こういうことを言う場合はどう言うのか」という最も近い実例を先に見つけようとするわけです。実例のパターンが見つかればそれが翻訳先文章の骨組みとなります。

次に、上記で決定した文章構造の骨組みに基づいて、翻訳元の文章の個々のコンポーネンツのすり合わせを行い、骨組みに肉づけを行う形で文章を完成させていきます。このとき、それぞれのコンポーネンツについても、論理性や感性を織り込みながら、実際に翻訳先言語で使用されている表現であるかを逐一検証したうえでその表現を決定していきます。

こうすることで、翻訳先言語では使われない文章構造や表現は最初から採用されないことになり、より自然な言い回しが可能になるわけです。翻訳先文章の案ができたところで、最終的に翻訳元の文章と見くらべ整合を取ります。

なお、前述のように、このプロセスは、それぞれ独立した段階で順序に基づき行われるのではなく、混然一体的に同時進行で行われる頭脳ワークになります。また、原文の実例ストックや実用例は実際のデータベースが存在するわけではなく、翻訳者の経験や感性に基づきアクセスすることができる資料やリソースを含む仮想的なものと考えてください。

段落の調整と書体やデザインとの整合

翻訳物を単なる文章の集合体ではなく、翻訳先言語における起承転結に基づいた「読み物」として完成させるためには、段落間あるいは段落内の文章間の論理的つながりが必要になります。

たとえば、日本語では複数の情報が並列的に連ねられることが多く、それが日本語らしさを出していると考えることもできますが、英語ではある程度のヒエラルキー(親子関係)を持たせることが必要な場合があります。最も重要な情報を先に提示し、その詳しい説明を後に持ってくるといった「主従」の関係を明確にすることでより論理的な文章展開ができるわけです。

また、原文がレイアウトやデザインとともに完成されている場合は、それらの要素に最もフィットした文章表現を考える必要があります。発信側のメッセージは、必ずしも文章のみに表現されているわけではありません。文章の書体、デザイン、ひいてはレイアウトによってページの作り出す白場さえも「何か」を感じさせようとしてるものです。こういったことを踏まえた文章作成が前提になります。

たとえば、日本語のキャッチフレーズは、短いわりには複数の情報を伝えていることがよくあります。漢字などを使用することで短く表現できるからです。しかし、その情報を伝えるとアルファベット言語の英語ではどうしても長くなりがちです。だからと言って、その英文キャッチフレーズが小さな文字で長い説明調というのではキャッチフレーズになりません。原文の意図を全く無視していると言えるでしょう。

同時に、翻訳が長すぎて文字が入らないためデザイン要素を小さくするとか、白場スペースに文字がぎっしりというのでは、これも話になりません。物理的に不可能な場合もありますが、できるかぎり短く効果的な文章表現にする工夫が求められます。

以上のようなことを踏まえながら、翻訳先言語での「作品」としてのトータルな視点から表現を追求するのが「通弁」クリエイティブ翻訳のプロセスです。