舌先を上顎(あご)につけてうんぬん、かんぬん… と言われてもね。ところで上顎ってどこのこと?顎に上も下もあったもんじゃない、顎は口の下に決まってるじゃん。「イー」の口の形をしたまま「エー」と言う?そんな器用なことできない、何度やっても「イエー」になってしまうよー。そうですね、よくあることです。その他、口蓋だとか無声子音だとか専門用語が出てきて、もうその時点でギブアップ。そんな発音のカベにちょっとだけ穴を開けてみましょう。



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Last update December 31, 2018
 ベロばさみ

th [θ] [ð] の発音 

こういった勝手な名前をつけていること自体が不謹慎なわけですが、「ベロばさみ」という名前の示すとおり、ベロの先っちょ(舌先)を、歯と歯の間で、ちょっと挟むようにして音を出します。これだけではわかりにくいので、スローモーションでやってみましょう。

1. 口を少し開けます。
2. 上の歯と下の歯の間に舌先をちょっとだけ挟(はさ)みます。

 のようにしっかり挟む必要はありません。これじゃ下手をするとベロが痛くなってしまいますね。

どちらかというと上の歯のに舌の先端をくっつけるような感じです。下の図では、舌と歯の位置をわかりやすくするために、口が大きく開いているように見えますが、実際の口の形はもっと平たくなります。(歯も二本しかありませんが、気にしないでください)

正しく舌先が歯の先端に付着したところで、
3. そのままの状態で、静かに息を吐きます。

 このとき、舌と歯の位置を動かしたり、口を動かしたりしないでください。せっかくのポジションが崩れると正しい発音ができません。あくまでも、口のポジションはそのままで、息を吐くだけです。

いかがですか?息を吐くことで出てきた空気が、歯と舌がくっついている箇所で「摩擦音」を起こしていますね。「音」と言っても、声は出ていないわけですから、「スゥーッ」といった音にならない音になっているはずです。

 ここで、間違っても「すうーっ」なんていう声を出してはいけません。その時点で「す」= [su] の発音に変わってしまいますので、十分注意して発音してください。

このように、舌先と上の歯の先端とがくっついた箇所で摩擦を起こして出てくる音、これが、ここで言う「ベロばさみ」の音で、発音記号で言えば [θ] という音になるわけです。

4. 実際に発音してみましょう。

いつまでも息を出しているだけでは意味がありませんので、実際に、この音を含む単語を発音してみることにしましょう。英語が苦手な人でも誰でも知っている「サンキュー」という言葉があります。この単語の「サ」の部分がこの音になります。まず、わかりやすくするために、単語を分解してみましょう。

th + ank + you

赤い文字の部分がこの発音にあたります。では、スローモーションでやってみましょう。

1) 上の手順に従って「ベロばさみ」 [ θ ] を発音します。

2) そのまま息を吐きながら「アンキュー」と言います。

いかがですか?息を吐きながら「アンキュー」と発音することで、英語の thank you の音になっているはずです。

 当然のことですが、「アンキュー」の「ア」の時点では、口を大きく開けるため、すでに舌先は歯からは離れているはずですね。「ベロばさみ」の状態のままでは、「ア」の発音はできません。「ベロばさみ」のポジションは、あくまでも最初の音を出すための「一瞬」だけです。

 また、くどいようですが、サンキューの「サン」のところでわざわざ「サ」と言わないようにしてください。わざわざ言ってしまうと、それは立派な日本語の「サ」になってしまい、何のために頑張って発音しているかわからなくなってきますね。息を吐きながら「アンキュー」というだけで、英語の thank you になるのです。

他に、この発音をする単語にどんなものがあるかというと、スペルに th が含まれている単語がすべてこれに該当します。強引にカタカナ表記するとスリー (three) 「3」、フィフス (fifth) 「5番目」の赤い部分の発音になります。





5. 応用編―― 2.に戻って、声を出す。

では、ジス・イズ・ア・ペン (this is a pen)this やザット (that)、ゼア (there) などはどうなるかというと、基本的には同じです。ただ、前者では、「息」の音だけだったのに対し、後者では、「声」の音が加わります。上の手順の 1、2 までは同じで、3 のところで、息を吐きながら喉を使って声を出します。

 あくまでも「声」だけを出すのであって、人為的に「ジー」とか「ゼー」とか「ズー」などという「具体的な声」を出してはいけません。せっかく口の位置が正しく出来ているのに、そういった余計な音を付け加えるために正しくない発音になってしまいます。

舌の位置と歯の位置をしっかり固定させた状態に保っていれば、こういう音は出るはずがないので、「ずーっ」などという声が出ているとすれば、それは明らかに位置がずれていることになります。あまり、むずかしく考えても仕方がありませんが、正しい舌の位置と歯の位置を保ったまま自然に出る声を出していればいいわけです。発音記号で言うと [ð] という音になります。

このように、声の出ていないバージョンが [θ] で、声の出ているバージョンが [ð] というわけです。

最後に実際の発音を聞いてみましょう。例として挙げたのは、thin 「細い」、this 「これ」という単語です。


(thin)

(this)