経済力にもカゲリが見えてきたニッポン。そんな日本が国際社会をリードするには堂々と意見を主張できる英語力。軽いノリの日常会話ではなく、系統立てて意見を述べるには、そのベースとなる文章力が必要です。ここでは「前置詞の使い分け」について考えてみましょう。



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Last update June 30, 2019 (Originally posted November 13, 2002)

前置詞の使い分け (1)

みなさん、お久しぶりですね。暑い夏も終わり、秋も深まり、もう木枯らしの吹く寒い冬がやってきますよ。私のように年をとってくると、さすがに寒さにはこたえますね。お炬燵などがそろそろ欲しい季節ですが、あ、みなさん、この漢字わかりますか?「炬燵」と書いて「こたつ」と読みますよ。今どきこんな漢字書ける人はなかなかいませんよね。私も書けなかったんですがね、ある日、日本語の得意なアメリカ人がおりましてね、彼に「Toshi はこたつという漢字が書けるか?」と聞かれましてね、書けないと言ったら、彼が得意そうに、僕は書けるんだとか言ってスラスラ書くんですよ。で、ちょっと悔しい思いをしましてね。私もどちらかと言いますと、負けず嫌いですから、それを機会に覚えたんですよ。もちろん懐炉なんてのも書けますよ。これは「カイロ」ですね、カイロと言ってもエジプトの首都ではないですよ。は、は、は…。

ということで、今日は Popolin さんという方からお便りいただいてますよ。ありがたいことですねえ。こうして、ご質問をいただくことで、私のほうも随分とお勉強になりますものねえ。さっそく、本題に入りましょうか。では、ご質問内容、紹介してみましょう。

オヤジ、ちょっと教えて欲しいんだけど、
前置詞って、どうしてこんなにわかりにくいのよ!
今さ、翻訳なんかやってんだけど、さっぱりわかんないのよ。
かといって、アタシにも「意地」ってもんがあるじゃない?
途中で「できません」とか言えないのよね。わかる?
前置詞よ、前置詞。
アンタ、ちゃんとわかるように説明すんのよ!

Popolin


あのー、これはやっぱり良くないですね。みなさんはこんなお便りを真似しないでくださいね。人に何かを聞くときは、ちゃんと「お願いします」という素直で謙虚な気持ちが大切ですね。それと、どういうことが聞きたいのか具体的に書いておかないとわかりませんね。

うーん、ただ「前置詞」と書かれているだけなので、どういうことが聞きたいのかわかりませんねえ。また、どうして、こういった「Popolin」さんのような「トリ」さんが「翻訳」をやっておられるかも、もひとつ、腑に落ちませんが、まあ、無下にするわけにも行きませんので。仕方がありませんから、前置詞ということで、一般的なことを説明することにしましょう。





ひとことで「前置詞」と申しましてもね、なかなか解りにくいんですね。「前に置く言葉」ということで、単語の前に置く言葉なんですが、ただ単純に前に置いておいたらいい、という訳ではなさそうですよ。実はね、Popolin さん、これはやはり、それなりの役割を持っているということなんですよ。その役割とは、ズバリ、文章のなかで、「単語と単語をつなぐ」という役目をしているんですね。じゃあ、ここで、ちょっと例文のほうを見てみましょうか。はい、例文、お願いします。

The product is on the manual.
The product is under the manual.
The product is into the manual.
はい、ということで、一番上の文章ですが、「商品がマニュアルの上にある」ということで、二番目の文章は「商品がマニュアルの下にある」ということです。マニュアルも商品の上になったり下になったりしておりまして、こういうシチュエーションの場合、商品が比較的厚さの薄いもので、マニュアルのサイズと同じくらいだと困ることがあります。一番上の場合、「あ、マニュアルが無い!」と言って、あちこち探し回ったあげく、結局、商品がその上に乗っていて見えなかったということになります。逆に真中の文章の場合、「あ、商品が無い!」と言って探し回った結果、マニュアルがその上に乗っていたので見えなかったということですね。何かを探すという苦労は同じなんですが、商品を探すのか、マニュアルを探すのかでは大きな違いがあります。

これは当たり前のことなんですが、つまりですね、単語と単語を「つなぐ」と言っても、何でも持ってきて適当につないだらいい、ということではないということなんです。意味が変わってくるということですね。ちなみに、最後の文章を見てみますと、「商品がマニュアルの中に入って行く」といった、現実ではちょっと考えられないようなことになってきますよ。商品が、ぐんぐんマニュアルの中に入って行く… なんてことになりますからね、怖いですよ。ということでですね、「つなぐ」と言えども、つなぐ相手に合わせた相応しい「つなぎ役」じゃないといかん、ということなんです。

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