スコットランド英語の発音 (1)
 
Last update December 31, 2024
一般的な傾向と特徴
 
スコットランドは、大ブリテン島(the island of Great Britain)の北三分の一を占める本土と北アイルズおよびヘブリーディス諸島を含む790の島々から成る国家で、「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」(The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)の一部を構成しています。同じ連合王国に属しながら、スコットランドの英語はイングランド英語(このサイトでは「イギリス英語」と呼んでいます)に比べて、発音面での顕著な違いが見られます。 
 
まず、スコットランド英語は、イギリス英語やオーストラリア英語とは異なり、「r」の発音に特徴があります。また、wine と whine の「w」と「wh」の音を区別することや、ほとんどの国や地域の英語では韻を踏む bird、herd、curd の母音が区別されるなど、他の英語にはみられない特徴があります。 
 
では、さっそくスコットランド英語の発音の特徴を見てみましょう。 
 
スコットランド英語の母音
  スコットランド英語の単母音
スコットランド英語の母音を口の大きさと舌の位置を軸にマッピングすると下図のようになります。 
 
 
口の大きさと舌の位置 
  狭母音(せまぼいん) close vowel 
  半狭母音(はんせまぼいん) close-mid vowel 
  半広母音(はんひろぼいん) open-mid vowel 
  広母音(ひろぼいん) open vowel 
  前舌母音(ぜんぜつぼいん) front vowel 
  中舌母音(ちゅうぜつぼいん) central vowel 
  後舌母音(こうぜつぼいん) back vowel 
 
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マップ上の左右方向は、舌の前後の位置を表し、左から右にいくにつれて舌の位置が前→後ろへ移動します。マップの上下は、口の開け方の大小を表し、上から下にいくにつれて、口の開け方が大きくなります。それと同時に、舌の前後の位置も、上→下へと移動します(口を閉じたときは自然に舌が上の位置にあり、大きく開けたときは下の位置に来ます)。 
 
たとえば、母音 /i:/ の発音は、口の開け方が狭く舌の位置が前にある状態で出てくる音であり、/o:/ は口の開け方は小さめ(半狭母音)で舌の位置が後ろのほうにある状態で発音される音ということになります。 
 
このマッピングは、どこの国の英語も同じではなく微妙に異なります。それによって、各国の英語の音の違いが出てくるわけです。 
 
  スコットランド英語の二重母音
| 二重母音 | 
/e/* | 
/ae/~/əi/ | 
| 単語例 | 
face | 
price | 
 
| 二重母音 | 
/oi/ | 
/o/* | 
 
| 単語例 | 
choice | 
goat | 
 
| 二重母音 | 
/ʌu/ | 
/ir/* | 
 
| 単語例 | 
mouth | 
near | 
 
| 二重母音 | 
/er/* | 
/(j)ur/* | 
 
| 単語例 | 
square | 
cure | 
 
  
* 厳密には二重母音とは言えませんが、他の英語圏との比較のため、ここに表記しています。 
 
以上、スコットランド英語の母音について見てみましたが、少し補足をしておきます。 
 
●「単母音マッピング」の中には、英和辞典でも見慣れない発音記号が含まれていますが、黒い文字でかっこ書きで、通常辞書などで使われている表記を記しています。 
 
●たとえば、/ʉ/ は、辞書の表記では /uː/ の表記になりますが、実際の発音では、それより舌の位置が前に来ます。 
 
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