Last update April 6, 2017
   




禁じられた遊び(?)

と言っても、もちろん、ギター曲の定番「禁じられた遊び」(YouTubeに飛びます)でもなければ、同名の映画でもない。もったいつけたタイトルだが、文字通り子供の頃にやっていて、近所のおいちゃんに怒られた「禁じられた遊び」のことである。

当時は、今のように塾もないので、学校の時間が終われば、子供の仕事はもっぱら遊ぶことだった。テレビゲームもなくDVDもない当時(やっとモノクロテレビが出始めた頃)の田舎の子供だ。戸外で元気に遊ぶ。暑かろうが寒かろうが外で遊ぶのだ。遊ぶ場所や材料には事欠かなかった。そんな遊びのなかでも、これをやっちゃ怒られるという「禁じられた遊び」がいくつかあった。その一例が「とうしゃく移り」と「大楠登り」だった。

もっとも、こういう名前の遊びがあるわけではなく、便宜上勝手につけた名前だ。「とうしゃく」というのは、少なくとも築上町出身で私と同年代の人であればわかるはずだが、稲刈りをした後の田んぼに脱穀後の稲穂を積んで、円筒形の家のような形にして置いておくもので、今はあまり見かけないようである。この言葉自体も、国語辞典などを引いても見当たらない。たぶん、福岡県だけの言い方なのかもしれない。ともあれ、稲刈り後の田んぼには、この「とうしゃく」がいくつも作られていて、その「とうしゃく」から「とうしゃく」へと飛び移って遊ぶのが非常に面白かった。

幼少の頃一番よく遊んでいたのが、最も家が近かったTちゃんとKYちゃんだったのだが、この「とうしゃく移り」にキャッキャッと夢中になっていると、どこからともなく怖いおいちゃんの「こらーっ!」という声が聞こえるのである。しかし、「こらーっ」と言われても、当時は「なしか?」と思うだけで理由がわからなかった。おそらく、せっかく結わえた稲穂の束がずり落ちたりするからだろう。




さて、次に「大楠登り」だが、当時の大楠は今のような「近寄りがたい」存在ではない。しかも、上城井も下本庄とくれば「地元の特権」というべきか、遊び場としては、小学校に次ぐ人気のスポットだったのだ。木の周囲は今のような「立ち入り禁止」ではなく、自由自在にアクセスできた。

もちろん木を保護する意味での措置だと思うが、「大楠も偉くなったもんだ」とちょっと寂しい気もする。そんな大楠に登って遊んでいたのだから、今にして思えば「恐れ多い」ことなのかもしれない。登ると言ってももちろん、そんな高いところまで登れるわけではない(とは言え、子供にとっては十分高いが)。下の写真で言えば、向かって右側に見える枝分かれした部分に2か所ほど腰かけられるようなスペースがあるが、そこまで登っていたわけである。そして、降りるときは、そこからするすると滑り台のように滑って降りる。これがまた、小学校なんかにある滑り台とは違ってスリルがあるのだ。

かくして、そんなことをしていると、またどこかの怖いおいちゃんが来て、「こらっ!お前だちゃ、また登っちょるか!つまらんちゅうたやろうが!」なんてことになるわけだが、子供なので「なぜつまらん」のかがよくわからない。まあ、落ちたら危ないというのもあったかもしれないが、「木の皮が傷んだりするからだ」というようなことも言われた気がする。

ともあれ、それでも性懲りもなく登って遊んだような記憶がある。登る以外にも、木の周囲を伝って移動する、木の周囲にある石の囲いに上がって綱渡りのように歩くというような遊びもやった。今改めて見ると、「こんなに狭かったのか」と思ってしまうが、子供にとって、神社の敷地も広くてスリルがあり、恰好の遊び場所になっていたわけである。


それにしても、最近の大楠の出世ぶりには目を見張るものがある。ネットで検索してみても、あちこちにプロの撮影とおぼしき美しい「大楠」の写真が掲載されている。(ちなみに、上の画像はgoogle検索のキャプチャ画面である。クリックすると大楠のいろんな写真が見られる。)「あの懐かしい大楠がこんなにきれいに撮ってもらって…」、「こんなに有名になって…」と人間ながら羨ましさも感じないではないが、地元出身者としては「誇らしい」気持ちもある。しかし、それと同時にふと心配になるのが、「大楠」だけが有名だが、いちおう「大楠神社」ってことで、「神様忘れたらいかんよね」ということだ。まあ、忘れていることはないかもしれないが、念のため。

話は戻るが、コンサートをはじめ、花火大会(日本一規模が小さいことで有名らしい)などのいろんなイベントも行われ、近隣地区から訪れる人も多いようである。また、「大楠の歌」まで作ってもらっているようで、どんどん手の届かない存在になりそうである。何しろ、樹齢1900年、全国3位の大きなクスであり、れっきとした「国指定天然記念物」だ。それに比べれば、自分など「昨日今日生まれたばかりのひよこ」である。足元にも及ばないのは当然だとも言えよう。

というわけで、下は、「大楠の歌」を演奏するコンサートの映像である。

大楠コンサート 「 築城大楠の歌 」 (YouTubeにジャンプします)