「結び」 (Complimentary Close) のスタイル (1)
valediction、あるいはもっとくだけて a sign-off とも呼ばれますが、「結び」 (Complimentary Close) は 英文レターや e-mail の「結び文句」のことです。ここでは、そういった「結び」について見てみましょう。
伝統的な結び文句
Yours sincerely または Sincerely yours、Yours faithfully など yours という言葉を入れるのが伝統的な英文レターの結び文句の特徴ですが、そのルーツは末尾につけていた「I am your most humble and obedient servant」といった文章にあるようです。つまり、「あなたの忠実な僕(しもべ)」というわけで、それを略して「Your obt svt」、「I am, etc.」などと変化しながら、Yours sincerely や Yours faithfully などに落ち着いたということです。では、こういった yours を使った結び文句の例を挙げてみましょう。
結び文句 |
説明 |
Yours sincerely, |
I am yours sincerely を省略したもので、最も一般的な言い方。冒頭部分を Dear Mr. XX や Dear John などで始めた場合など、相手の名前がわかっている、ある程度の面識がある相手に対して使う。 |
Sincerely yours, |
上の表現のアメリカ英語版。 |
Sincerely, |
上の表現のバリエーションで、ややインフォーマル。主にアメリカ英語で使われる。 |
Yours faithfully, |
sincerely より距離感があり、冒頭で Dear Sir/Madam を使った場合など、相手の名前がわかっていない場合に使う結び文句。ただし、名前がわかっていても面識がなければ sincerely を使ったものよりもこちらを使用すべきだという意見もある。アメリカ英語ではほとんど使われない。 |
Yours fraternally, |
労働組合などでよく使われる結び。 |
Yours (sincerely) in Christ |
キリスト教関係者の間で使用。 |
Yours truly, |
イギリス英語では、正式なレターでは Yours sincerely や Yours faithfully を使うのがベターだとしている。また、受信者の身分が送信者より高い場合にこの表現を使うという意見もある。お客あてに会社名で送る場合などにも使われることがある。 |
Yours hopefully, |
苦情のレターなどで使われることがある。 |
Yours sincerely, etc. |
ルーツとなった「I am your most humble and obedient servant」からの発展形のひとつ。アメリカの法律関連などで使われることがある。 |
Yours, etc. |
上の言い方を省略したもの。 |
Yours ... はもう古い?
以上、yours という単語を入れる「結び」の表現を挙げてみましたが、「こういった表現はもう古い」という意見もあります。じゃあどんな結びがいいのか?というと、大半が Best regards や Regards を挙げている人が多いようで、なかには「フォーマルな言い方」なので正式なレターにも使えると考えている人もいるようです。
しかし、これらの表現には賛否両論あり、e-mail ならいいけれど正式なレターに使えるほど「フォーマル」(改まった言い方)ではないという意見や、使えるが友人やよく知っている相手にとどめておくのが無難という意見もあります。さらには、e-mail とレターは「似て非なるもの」、もともと e-mail はインフォーマルなメディアであり、そこでは Best regards などの表現はマッチするが正式なレターではふさわしくないという考え方もあります。
確かに、個人的な体験からみても、日々やりとりするビジネスメールのなかで最も一般的な表現は Best regards, Regards, Kind regards です。(ただし、日本とは異なり英語圏の相手とはクライアントであってもファーストネームでのやりとりになるため、ビジネスライクですが、決してかしこまった雰囲気のやりとりではありません。)
また、今や通常のビジネス関連では e-mail を使うのが当たり前で、わざわざ郵便メールを送るのは法律関連や特別な用途に限られます。そういった背景もあり、英語圏の大半の人々の間でもこれらの表現が一般的だと感じるのではないかと思われます。
とは言え、世の中いろんな考えの人がいるわけで、「礼儀を欠いている」と思われるよりは「ていねいすぎる」と思われた方がダメージが少ないので、ビジネスでのやりとりにおいては、以下のようなルールを設けることも1つの方法だと思います。
e-mail 通信でファーストネームベースの相手なら Best regards, Regards, Kind regards
e-mail 通信で Mr./Ms. ベースの相手なら Yours sincerely や Sincerely
正式なレターなら Yours sincerely や Yours faithfully
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