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Last update January 12, 2019

RP は教養の香り?

一般的に、イギリス英語と言えば「クイーンズ・イングリッシュ」 (Queen's English) や「キングズ・イングリッシュ」 (King's English) 、あるいは 「BBC イングリッシュ」 (BBC English)、オックスフォード・イングリッシュ (Oxford English) などとさまざまに呼称される格調高い英語を思い浮かべます。それには、イギリス英語の発音のコーナーでもご紹介していますが、Received Pronunciation (RP) 「容認発音」が世界的に知られているという背景があります。



ちなみに、RP は「発音」だけでなく、イントネーションや表現法も含まれる「話し方」全般を指しています。厳密に言うと、前述の「クイーンズ・イングリッシュ」や「BBC イングリッシュ」などが必ずしもこの RP と一致するとは限らないようですが、かって RP と言えば「教養」や高いステータスの証でもあり、社会的な成功をめざす人々はこぞって RP の習得をめざしたものです。

たとえば、かの「鉄の女」 (the Iron Lady) と呼ばれた元首相のマーガレット・サッチャー (Margaret Thatcher) さんも、出身地であるリンカンシャイアー (Lincolnshire) の方言から RP に切り換えた一人でもあります。

つい最近では、サッカー選手のデビッド・ベッカム (David Beckham) さんの例が挙げられます。ずっと以前に彼のインタビューを聴いたときには、「コックニー (Cockney) 訛り」の強い英語を話していましたが、最近のインタビューでは、「あれ?」と思うようなわかりやすい英語に変わっていたのが印象的でした。メディアでは、「ベッカムの英語が posh (スマート、上流社会的)になった」などと言われています。

確かに、(年齢もあるかもしれませんが)以前は「下町のにいちゃん風」だったのが、今では「優雅なジェントルマン風」になり、「英語は人を表す」というのもまた言い得て妙だと言えるでしょう。ということで、彼も RP への転向者の一人です。

しかし、その一方で、RP しか認めないという風潮も変わってきており、今では、あまり訛りがきつくなく、わかりやすければOKといった考え方が一般的のようです。かっては、上昇志向の人々は、生まれや育ちを悟られないように RP に近い英語を話そうと努力したもので、それが「教養」というものでした。しかし、今では、きちんと教育も受けて、もともと RP を話す人たちが、逆にロンドンの下町言葉であるコックニーに近い話し方をする傾向も出てきました。

それを最初にやった有名人が、あのローリングストーン(Rolling Stones)のミック・ジャガー(Mick Jagger)さんだと言われています。ロックスターともなると、お高くとまった上流階級よりは一般ピープルの支持を得ようとするのは当然のことかもしれません。

しかし、本物のコックニー英語は、発音やイントネーションだけでなく文法も違いますので、こういったうわべだけを真似た偽物のコックニー英語を「モックニ―」(Mock 「からかう」+ Cockney)と呼んでいます。こういった傾向は音楽の世界だけでなく、政治の世界でも見られます。元首相のトニー・ブレア(Tony Blair)さんもよくコックニーに近い話し方をすることがあるようです。

とは言え、本来の自分の話し方を全く変えてしまうというよりも、「より身近に感じてもらう」ために相手に応じて話し方を変えているといったほうが適切でしょう。ちなみに、ミック・ジャガーさんはアメリカ英語のアクセントでも歌いますし、トニー・ブレアさんも、オックスフォード訛りや下町言葉など、話し方を七変化させておられるとか。

今は、RP は古臭いイメージもあるようで、コックニーっぽい話し方が「クール、カッコいい、今風」という風潮があり、高級住宅街の店で高級服を身に付けた若い女性たちが、堂々とコックニー英語を話す光景も見られるようです。友達と外出するときはコックニー、家に帰ったら RP、ジーンズでお出かけのときは断然コックニーなのよね!というノリなのか(?)、さすがに英語本場のイングランド、言葉も時と場合に応じて「着替える」感覚なのかもしれません。