スペイン語文法ノート 英語なら1種類しかない「~した」という過去の事実を述べる表現。スペイン語では点過去と線過去の2種類があり、文章を作るたびにどちらを使えばいいのか悩むところ。その使い分けなどをまとめてみました。




ニュースの過去、物語の過去


Última actualización: 16 de abril 2016


| さらでスペイン語トップ | はじめてのスペイン語 | スペイン語用語集 |  スペイン語文法ノート  | スペイン語表現ノート | スペイン語の歴史 |

さらでスペイン語トップ  はじめてのスペイン語  日本語で学ぶスペイン語単語  スペイン語文法ノート  スペイン語用語集  スペイン語の表現  スペイン語の歴史  前へ 


ニュースの過去

「点過去」と「線過去」の比較のところでも挙げていますが、過去の出来事を事実として淡々と述べる場合に使われる「点過去」は、「ニュースの過去」と呼ぶことができます。

実際、新聞などでも、過去の出来事を伝える場合、「点過去」を使うのが常識です。下の例は、エル・パイス紙 (El País) の記事の一部です。

Por vez primera desde 2004, España y EE UU hablaron sobre Cuba en tono amistoso, casi de complicidad. Fue el propio Obama quien suscitó la cuestión, lo que demuestra, a juicio de las fuentes consultadas, que forma parte de su agenda personal. (El País)
(2004年以来初めて、スペインとアメリカ合衆国が、キューバ問題について話し合った。話し合いは、非常に親密で和やかな雰囲気のなかで行われたが、そもそも、この問題を提起したのはオバマ大統領自身で、関係筋によると、大統領自身、高い関心を持っている問題であるのは明らかだ。)

このように、「点過去」を使って、「いつ、どこで、だれが、何を」といった事実を的確に伝えています。もっとも、それがニュースの役割というもので、「いつだったかわからないんですけど、話し合いが持たれたようです」というのではニュースになりません。逆に、こういった「うわさ」レベルの話であれば、「線過去」を使って表現することもできますが、正確さや明確さという意味では、新聞やニュースメディアとしては用をなさないわけです。




リアルの過去
「ニュースの過去」とは、「リアルの過去」と言い換えることもできます。「リアルの過去」とは、文字通り、「現実世界の過去」ということで、「確かに、実際に起きた」という事実であり、「いつ起こったか(いつ始まって、いつ終わったか)」という時間の区切りが明確であると定義できると思います。この場合の「明確である」というのは、話者がその出来事について知っているかどうかというのではなく、あくまでも、現実世界のなかで実際に、「いつからいつまでの期間で起こった」という意味です。

さらに言うならば、「現在」という「現実の時間」に視点を置きながら、「過去」の出来事を語るというわけです。もちろん、関連する直前の出来事には「現在完了」を使う場合もあり、「お知らせ」など現在や未来のことを伝達する場合は「現在形」や「未来形」が使われるのですが、「ニュースにおける時間」というものは、始まりと終わりがはっきりしていて、過去現在未来という時間の流れが「直線」を表しているのも特徴です。

では、ニュースでは「点過去」を使うということだが、「線過去」は全く使われないのか?―というと、そんなことはありません。「点過去」によって導入された出来事について、「そのときどうだったか」といった状態説明や詳しい描写を加える場合には「線過去」が使われます。

ニュースの過去

イメージ的には、伝えるべき過去の事実を「点過去」によって、標石のように配置しながら、それぞれの標石の説明や描写を「線過去」を使って行うといった感じになります。

また、新聞などのヘッドラインでは、過去の事実を伝える場合であっても「現在形」を使う場合も多く見られます。これは、英語でもそうですし、日本語の新聞見出しでも過去形の動詞を使うことはめったにありません。つまり、現在形を使うことで、より簡潔さやインパクトが出るということが言えるでしょう。





物語の過去

「ニュースの過去」とは対照的に、「物語の過去」では「線過去」が使われます。下記は、おなじみ「赤ずきんちゃん」(Caperucita Roja) のスペイン語版の書き出しです。

Había una vez una niña muy bonita. Su madre le había hecho una capa roja y la muchachita la llevaba tan a menudo que todo el mundo la llamaba Caperucita Roja.
(あるとき、とても可愛らしい女の子がいました。お母さんが赤いずきんを作ってくれて、女の子はいつもそれをかぶっていたので、みんなは女の子のことを「赤ずきんちゃん」と呼んでいました。)

物語の原点ともいえる「昔話」は、日本語では「昔々、あるところに…」、英語では Once upon a time がお決まりの書き出しで始まります。「昔々」とはどのくらい昔なのか、日本で言えば奈良時代なのか平安時代なのか、いつの時代の話なのかというのがあいまいで、「いつかはわからないが、とにかく、任意の昔です」といったところでしょう。言ってみれば、どれくらい昔なのかは「どうでもいい」わけで、問題にしないということなのです。




バーチャルの過去
つまり、物語の時間とは、ニュースとは異なり、「バーチャルの過去」だと言えます。「現実世界の時間」ではなく、「フィクション・仮想世界の時間」だというわけです。そもそも、物語を読む(聞く)ということは、現実という日常の世界をしばし離れて、非日常的な幻想の世界に入り込むことであり、小説などを楽しむということは、現実の世界を忘れて別の世界に浸ることができるということでもあります。

現実世界の時間は、過去現在未来という直線的な流れをしていますが、物語の世界では時間の流れが異なります。乱暴な言い方をすれば、律儀に最初から読む必要もなく、途中から読み始めてもかまわないわけです。また、本を開くたびに最初から読み直すという人もいません。読みかけた途中からまた読み始めるわけです。そういうことから、始まりもなければ、終わりもない時間であり、何度も読み返したりすることで、再びその時点に戻ることができる「円環的な」時間の流れがあるということができます。あえて図式化すれば、過去現在未来過去~… といった流れになるでしょう。

時系列的で直線的な現実の時間に縛られず、自由で柔軟な時間の流れを持っているのが「物語における時間」ということができます。始まりもなければ終わりもない時間、繰り返される時間、任意であいまいな時間、ということから、物語の過去では「線過去」が使われるのです。




とは言え、物語の中でもまったく「点過去」が使われないということではありません。「ニュースの過去」もそうですが、「点過去」と「線過去」のどちらか一方しか使われないというのでは、厳密な時間的な係りや時間差などを表現する事ができず、メリハリの利いた生き生きとした文章展開ができません。

「点過去」と「線過去」の比較でも触れていますが、「点過去」は「次の出来事を提起」する、つまり、話を次に進める・展開させるという役割を持っています。対して、「線過去」は話の展開をいったん止めて描写などを行うため、「線過去」ばかりでは、物語も展開しないことになってしまいます。このように、話の展開をさせる場合に、「点過去」が必要になってくるのです。

物語の過去

イメージ的には、あいまいではじめも終わりもない物語の世界が「線過去」により想定され、物語を次の段階へ進めるために、「点過去」を使うということになります。

ちなみに、物語以外に考えられる非現実の世界として、眠っているときに見る「夢」がありますが、この夢のなかでの出来事を語る場合にも「線過去」を使います。