スペイン語文法ノート 英語なら1種類しかない「~した」という過去の事実を述べる表現。スペイン語では点過去と線過去の2種類があり、文章を作るたびにどちらを使えばいいのか悩むところ。その使い分けなどをまとめてみました。




「点過去」と「線過去」の時間


Última actualización: 16 de abril 2016


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過去の時間の違い

まず、最初に、スペイン語やラテン語系の言語は、深い時間の概念を持っているということを覚えておいてください。それは、「~した、しました」という1種類の過去形しかない日本語や、あっても過去と過去完了しかない英語などとは大きな違いがあります。それだけ「時間」の種類や性質について、厳密に考えているということができるでしょう。

ここでは、「点過去」と「線過去」の時間的な考え方の違いについて述べますが、「点」と「線」ということから、線過去で表現される事柄は、点過去に比べて時間的にも持続性や継続性のあるものに対して使われるということがいえます。

そういったことから、点過去とは、「継続しない完了している事柄」に対して使われ、線過去は「習慣、完了していない事柄」を語るのに使用されるわけですが、事柄の時間的な長さや内容的な特性だけで使い分けを理解しようとすると、どうしても限界があります。

たとえば、「家に着く」という事柄があります。これは、単純に考えると「着く」という一瞬の時間で、「点」と考えられますから、「家に着く」という場合はすべて「点過去」で表現するのかということになります。しかし、下の例文のように、点過去だけではなく、線過去でも表現することができます。

  Llegué a casa muy tarde.
(点過去:かなり遅く家に着いた。)
  Llegaba a casa cuando sonó mi movil.
(線過去:家に到着しようというときに携帯が鳴った。)




つまり、線過去と点過去の使い分けを理解するには、事柄の時間の長さや、「習慣だから」とか「完了していないから」といった判断に基づく理解だけでは無理があるのです。「着いた」と「鳴った」という動詞に対して、それぞれ点過去と線過去のどちらを使うべきか―といったアプローチでは、「携帯が鳴ったとき、家に着くという動作は完了していたと考えるべきなのか」とか、「では、家に着くという動作はどこからどこまでを言うのか」などと、判断するだけでも悩んでしまうことになります。

それには、まず、その文章で、どの出来事に「時間の中心」を持ってくるかを考える必要があります。言いかえれば、「家に着く」ということと、「携帯が鳴る」ということのうち、どちらの時間を基準にするか(時間の視点を置くか)ということです。「時間の基準(視点)」ということは、出来事の開始時点を表現する(例:「電話が鳴る」という出来事が開始した時点)という意味で、日本語で表現するなら、「~した」という表現を使う出来事を指します。それに対して、「~していた」というような日本語が当てはまる部分は、時間的な基準の置かれていない出来事だということができます。

上の例文の二番目では、「携帯が鳴る」という点に時間の基準を置いていますが、次の文ではどうでしょう。

  Sonaba mi movil cuando llegué a casa.
(家に着いたとき携帯が鳴っていた。)




「家に着く」というところに基準を置き、「携帯が鳴る」のはその前後の時間において起こっている付随的な事柄として表現しています。

このように、時間差を持って起こる2つの出来事を表現する場合、時間の基準(視点)を置いた事柄に対しては、「点過去」を使い、もう一方の出来事には「線過去」を使うというのが基本です。「家に着く」「携帯が鳴る」といったそれぞれの出来事に対して、「時間的に短いか長いか」、あるいは、「継続性があるかないか」などの判断をしてから、点過去か線過去のどちらを使うかということを決めるのではなく、出来事の時間的な位置づけによって、どちらを使うかが自然と決まってくるのだということなのです。



絶対時制と相対時制

次に、点過去と線過去の「時制」の種類について考えてみたいと思います。「点過去」と「線過去」の比較表のなかでも記述していますが、点過去は「絶対時制」であり、任意の過去の絶対的な時点を表します。言いかえれば、時間の基準を置かない出来事や後に続く説明的な文章に対して「基準となる時制」を導入するということができます。一方、線過去の時制は「相対時制」です。よって、ある基準となる時制(例:点過去で導入された絶対時制など)に対して関連する時制だと位置づけることができます。

「相対的」というからには、どこかにその基準となる時間を表す「前提」があるというわけです。一般的な用法として、「点過去」で絶対的な時制を導入し、それを基準として、相対的時制を用いて「線過去」で説明などを加えるという方法があります。ですから、上の項で挙げた例文では、視点を置いた出来事を点過去(水色マーカー)で表現するため、これが絶対時制となり、それを基準として、付随する出来事の時間を相対的に線過去(黄色マーカー)で表現しているわけです。

  Llegaba a casa cuando sonó mi movil.
  Sonaba mi movil cuando llegué a casa.

また、下の文章のように、点過去で過去の出来事を導入し、それを基準に、線過去で説明や描写を加えるという例もよくみられます。

  Entró una mujer en la tienda. Ella estaba apresurada y buscaba a alguien.
(ある女が店に入ってきた。彼女は急いでいる様子で、人を探していた。)

ちなみに、線過去は、別のスペイン語で copretérito (co- 「共に」 + pretérito 「過去」)とも呼ばれ、「他のものといっしょに過去になる」という意味合いが含まれます。この呼び方が示すように、線過去は、何らかの時間を基準として使用されるということを前提にしているといえます。





区切られた時間と区切りのない時間

以上のようなことから、「点過去」とは、出来事の開始を記述するのに使われるため、「時間の区切り」が明確であるということができます。

これは、たとえば、「何年何月何日の何時」というふうに物理的な時間がはっきりしているという意味ではなく、あくまでも、話者の心理のなかで「明確」であると考えるわけです。つまり、時間的な基準を置く―出来事の開始時点を表現しているということです。

それに対して、「線過去」とは、「そのときどうだった」ということを表現するため、「時間の区切り」はあいまいで、どこが開始時点で終了時点なのかは明確ではありません。これは、話者が記憶として覚えていないということではなく、語る内容として、時間の区切りは問題にしないということを意味しています。

さらに言えば、「時間の区切り」がはっきりしている「点過去」では、継続しない事柄や完了した事柄を述べる場合に使用し、逆に、「線過去」は、習慣や継続されている事柄、あるいは、まだ完了していない事柄を述べるという使い分けが成り立つわけです。

多少乱暴ですが、イメージ的には、

 点過去→絶対的な時間、はっきりした時間、メインの出来事、強い過去の時間(出来事)
 線過去→相対的な時間、あいまいな時間、サブの出来事、弱い過去の時間(出来事)

といった図式が成り立つといえるでしょう。