日本語と英語の違いとは?日本語の「起承転結」と英語の「序・本・結」ここでは、日英の段落展開について考えてみたいと思います。論理的な流れ1つの言語で書かれた読み物を別の言語での作品として完成させるには、それぞれの文章の論理性だけでなく、その作品全体で論理的な流れを作っていくことが必要です。日本語では、物語などを書くときによく言われる「起承転結」という考え方があります。元来、漢詩を作るときに使われた手法で、これをこのまま企業のメッセージや科学的な内容のものに転用するには無理があると思います。とは言え、論文など一部の用途をのぞいて、英語のようなパラグラフを使った書き方をしているわけではないので、「起承転結」という考え方をざっくりと応用した「開始、発展、結論」という基本的な流れで書いている場合がほとんどではないかと思われます。 それに対して、英語には 英語の「イントロ(導入部)」は、読者の注意を向けさせると同時に、何を語ろうとしているのか(結論)を知らせる意図があります。次に、「ボディー(本文)」が来て、その中で自分の考えを展開させていきます。そして、最後に「結び」で締めくくります。 ところが、日本語の「起(開始)」の部分では結論が述べられていないことが多いのです。というのも、「起」とは結論を述べるためのものではないからです。「昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました」といった場面設定をするわけです。 物語を書いているわけではないのですが、子供のころから「起承転結でものを書け」と教えられているため、実用的なライティングにもついこの概念を持ち込んでしまうような傾向があります。いきなり「本題」に入るのもあまりにも素っ気ないというのか、さして「お世話」になっていない相手に対しても「お世話になっております」と書き出したり、全然知らない相手でそのご清栄などはどうでもいいはずなのに、「ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」などと言ってみたりするのかもしれません(もちろん、日本人としては心地よい表現なのですが)。 ともかくも、日本語では、最初は一般的な入りやすいところから入り、期待を高めて、最後で結論を言って盛り上げるという流れになっていると言えます。 段落分けの違いさて、起承転結や図の中で赤い四角形で表したのがパラグラフです。日本語では、それぞれのパラグラフが、情報を小分けして詰め込んだ「箱」のように並んでいるイメージですが、英語では、イントロから最後の結論に至るまでの「階段の一段」のような機能を果たし、論理の飛躍なしに一歩ずつ登っていくというイメージになります。 では1つのパラグラフの構造を見てみましょう。日本語では、先ほど述べた「情報の箱」なので、関連性があると思われる情報(文章)が順序良く並べられているだけなのに対して、英語では、下の図のように、構造化されたものになります。 まず、英語には「パラグラフ分け」の基本的なルールがあります。どういう場合にパラグラフを換えるのか、新しいパラグラフに移るのかということですね。
次に、それぞれのパラグラフの構造ですが、
最初の「トピック文」というのは、このパラグラフで何を語るかということを要約して述べる短い文章です。この文章が簡潔で効果的な表現がされているほど、読者の関心も高まります。 次に「サポート文」が来るわけですが、これは、「トピック文」を支える部分であり、トピックについて掘り下げる役割を持っています。また、トピック(主張や意見)に信ぴょう性を持たせるための「エビデンス(証拠となるデータなど)や事例」を提示する文章もここに入ります。さらに、必要に応じて、そのエビデンスが適切である(トピックとの関連性)ということを説明する文章が入ります。 最後に、締めくくりの「結論文」が来て1つのパラグラフが終了します。 以上、これはあくまでも基本パターンですが、それぞれのパラグラフの関連性が密接で、意味を持った段落分けになっている英語のパラグラフに対して、日本語では、どうも「1個の文章の塊り」くらいにとらえているような傾向もあります。英語のようなトピックセンテンスもありません。 長くなったからここら辺でパラグラフを変えておこうというのか、1つの段落が長すぎないように、内容に合わせて適当に区切っているという考え方が一般的です。また、同一パラグラフのなかに別々の情報を混在させることもあります。 たとえば、「研究開発」というタイトルのページで、研究所の紹介や共同開発について語られているなかに、余白を活用しようという意図があるのか、突然、「研究所スタッフのための福利厚生施設」の説明などが入ったりする場合があります。 日本語の理屈で行くと、「研究開発に関係することなのだから同じ場所で語ってもおかしくない」と言えるかもしれませんが、英語的には、情報の焦点が明確に定まりません。 「翻訳」に基づいたライティングにおいては、こういった日英間の論理的な流れや段落分けにも留意しながら、文章を作成していくことがポイントです。 |