Last update May 29, 2021

ケルトイの言語ケルト語 (2)

さまざまなケルト語

ケルト語には、P ケルト語と Q ケルト語がありますが、それは、ケルト祖語の kw の音をどう発音するかによって分類されます。P ケルト語では、 kw k の音になり、Q ケルト語では p になります。ゲール語やケルトイベリア語は Q ケルト語であり、ブリソン語やガリア語は P ケルト語になります。

各地で発展したさまざまなケルト語をまとめてみると以下のようになります。

名前 使用地域 年代 特徴
アイルランド語 (Irish) アイルランド、マン島、大ブリテン島の西岸 4世紀~ ゲール諸語から発展した現存するケルト語。原始アイルランド語から古期アイルランド語(6世紀頃)、中期アイルランド語(10世紀頃)、近代アイルランド語へと発展。
ウェールズ語 (Welsh) ウェールズ、イングランド、アルゼンチンの一部 6世紀~ 西ブリソン語から派生した現存するケルト語。ウェールズ以外にもイングランドのウェールズ国境地域、ウェールズ人の移民が住むアルゼンチンのパタゴニアなどで使われている。
ガラティア語 (Galatian) トルコ、アンカラ 紀元前3世紀~紀元4世紀 ガリア語の方言とも言われる。ヨーロッパからのケルト人による侵略・移民により伝播。大陸ケルト語。
ガリア語またはゴール語 (Gaulish or Gallic) ガリア地域 紀元前3世紀~2世紀 イタリア側のシサルパイン語 (Cisalpine) とフランス側のトランスアルパイン語 (Transalpine) に分岐したと言われる。碑文や地名、古代文献における部族名として登場。大陸ケルト語。
カンブリア語 (Cumbric) スコットランド南部、イングランドの一部 ~12世紀 西ブリソン語から派生。イングランドでは、カンバーランド、ノーサンバーランド、ランカシャーなどで話されていた。12世紀頃に絶滅。
ゲール(ゴイデル)諸語 (Gaelic or Goidelic languages) アイルランド、スコットランド、マン島 4世紀頃~ ブリソン語とならぶ島嶼(とうしょ)ケルト語の一派で、アイルランド語、スコットランドやマン島のゲール語へと発展。Q ケルト語。
ケルトイベリア語 (Celtiberian) イベリア半島北東部 紀元前3世紀~1世紀 ドウロ川、タホ川、フカル川、トゥリア川、エブロ川上流域で話されていたとされ、碑文や地名などに見られる。大陸ケルト語。
コーンウォール語 (Cornish) イングランドのコーンウォール地方 8世紀~ 南西ブリソン語から派生した現存するケルト語。
スコットランド・ゲール語 (Scottish Gaelic) スコットランド、ケープ・ブレトン島、カナダの一部 12世紀~ 中期アイルランド語から派生した現存するケルト語。
タルテシア語 (Tartessian) イベリア半島南西部 紀元前7世紀~5世紀 おそらくケルト語の一派であると思われている言語。碑文などに見られる。大陸ケルト語。
ノール語 (Noric) 中央・東ヨーロッパ ?~2世紀 主にオーストリアやスロベニアにて話され、人名や地名として残されている。大陸ケルト語。
ピクト語 (Pictish) スコットランド 1世紀~9世紀 プリテニック語から発展した P ケルト語で、後にダルリアダ王国のゲール語に押され絶滅。
ブリソン諸語 (Brittonic or Brythonic languages) ウェールズ、コーンウォール、ブルターニュ半島 紀元前6世紀~ ゲール語とならぶ島嶼(とうしょ)ケルト語の一派で、共通ブリソン諸語から西ブリソン諸語、南西ブリソン諸語に分岐。コーンウォール語、ウェールズ語、ブルトン語へと発展。P ケルト語。
共通ブリソン語 (Common Brittonic or Brythonic) 大ブリテン島 紀元前8世紀頃~6世紀 ケルト祖語から発展した島嶼(とうしょ)ケルト語で、ブリトン人によって話されていた。6世紀頃にはブリソン諸語に分岐。P ケルト語。
プリテニック語 (Pritenic or Pretanic) 大ブリテン島北部 1世紀~9世紀 共通ブリソン語から派生した P ケルト語で、ローマが大ブリテン島南部を統治していた頃、北部の人々が話していたとされる。プレタニック語とも。
ブルトン語 (Breton) ブルターニュ半島 8世紀~ 南西ブリソン語から派生した現存するケルト語。ブリテン諸島からブルターニュ地方に移民してきた人々によって伝播。現在は話者の数も減少し絶滅の危機にある。
マン島語 (Manx) マン島 13世紀~ 中期アイルランド語から派生。1974年にいったん絶滅したが、最近復活している。
ルシタニア語 (Lusitanian) ポルトガルおよびスペインの一部 ~2世紀 おそらくケルト語の一派であると思われている言語。碑文や地名などに見られる。大陸ケルト語。
レポント語 (Lepontic) アルプスの南側地域 紀元前7世紀~4世紀 ガリア語の方言とも考えられており、碑文や地名などに見られる。大陸ケルト語。


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