中英語のアルファベット (2)
古英語のアルファベットと比較しながら、どう変化したかをまとめてみると、以下のようになります。
「アッシュ」、「エズ」、「ソーン」、「ウィン」の文字
古英語 |
ラテン語のアルファベット20文字に加えて、「アッシュ」(ash) という Æ, æ、「エズ」(eth) という Ð, ð、「ソーン」(thorn) と呼ばれる Þ, þ、「ウィン」(wynn) という Ƿ, ƿ の4文字があった。
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中英語 |
母音 [æ] が [a] に統合されたため、「アッシュ」の文字は使われなくなった。
13世紀になると、「エズ」が 姿を消し、「ソーン」に統合されるが、「ソーン」も14世紀には消滅し、th がこれに取って代わる。
13世紀になると、[w] を表記する「ウィン」の代わりに、ラテン語から入った W, w が使われるようになる(近代になって再編さんされた古英語・中英語のテキストでは W, w に統一されている)。
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K、Q、Z の文字
古英語 |
K、Q、Z の文字は使われなかった。 |
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中英語 |
K、Q、Z の文字が使われるようになった。
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「インシュラー体」の g
古英語 |
[g] の音を表記するには、「インシュラー体」(insular script) と呼ばれる文字書体の Ᵹ, ᵹ を使っていた。 |
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中英語 |
[g] の表記としては、「カロリング小文字体」(Carolingian minuscule) と呼ばれる書体(現代の G, g)へと移行した。
ただし、文字として完全に消滅したわけではなく、[ɣ], [j], [dʒ], [x], [ç] の音を表記する ȝ として存続し、「ヨグ」(yogh) と呼ばれた。
しかし、次第に「j」や「y」あるいは「gh」などの表記に変化し、やがて使われなくなる。
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v, u, w と i, j
古英語 |
v と u は同じ文字のバリエーションで、[w] の音を表記するため vv、vv と表記されることもあった。
i と j は同じ文字のバリエーションとして使われていた。
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中英語 |
v と u、i と j はまだ同じ文字として使われることもあったが、次第に別の文字として確立されてきた。
[w] の音を表記するために、w の文字が確立した。
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