Last update May 29, 2021

中英語の文法 (3)

動詞の変化

中英語期の動詞の活用は、古英語の活用にくらべるとかなり単純化されています。古英語で区別していた「直接法」、「接続法」、「命令法」といった「法」(mood) も存在していましたが、語尾変化はかなり単純化され、「命令法」はほとんど他と区別がつかないようになっていたようです。また、「接続法」も「活用」とは言えないほど単純化されています。

下記の表は、「強い動詞」(strong verb) である singen (「歌う」)、「弱い動詞」(weak verb) である baþen (「入浴させる・する」)の活用です。中期英語では方言によるバラツキもありましたので、あくまでも「一例」ということであげています。

時制・法 人称代名詞 singen baþen
不定詞 singen baþen
直接法現在 singe baþe
あなた singest baþest
彼/彼女/それ singeþ baþeþ
複数人称 singen baþen
直接法過去 sang baþede
あなた songest baþedest
彼/彼女/それ sang baþede
複数人称 songen baþeden
接続法現在 singe baþe
あなた singe baþe
彼/彼女/それ singe baþe
複数人称 singen baþen
接続法過去 songen baþede
あなた songen baþede
彼/彼女/それ songen baþede
複数人称 songen baþeden
現在分詞 singende baþende
過去分詞 ȝesungen baþede

ところで、baþen の 「þ」の文字は、現代の「th」の発音になります。こうしてみると、不規則動詞の sing の過去形は sang、過去分詞は sung、そして規則動詞の過去・過去分詞は bathe, bathed, bathed のように -ed の語尾をつけるという現代の形に近づいてきているような印象を受けますね。


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