Last update May 29, 2021

消滅した古い単語たち (1)

その80%が消滅してしまったという古英語の語彙。どんな単語が消えてしまったのかというと、動物に関する語彙や、そのまま口に出すのはちょっとはばかられるといった下ネタの単語などが多いようです。では、そういうことを一切口にしなくなったのかというと、もちろんそんなことはありません。

ではどうしたのか?――ずばり、ラテン語やギリシア語の語彙で代用していたようです。日本語でもそうですが、横文字を使えばなんとなく賢そうに聞こえます。学術語にラテン語やギリシア語を使うのも、日常的な語彙ではないことを強調したかったのかもしれません。

ということで、今はなくなった古英語の単語をいくつか紹介します。なお発音のカタカタ表記はあくまでも目安であり、正確ではありません。

動物に関連する語彙

古英語 発音 現代英語 説明
acwehorna アクウェホルナ squirrel 「リス」。古フランス語の一種であるアングロ・ノルマン語の esquirel から派生した単語に移行。
āðexe アーゼッケ lizard 「トカゲ」。古フランス語の lesarde から派生した単語に移行。
cawelwyrm カウェリウィルム caterpillar 「毛虫」。古フランス語の catepelose から派生した単語に移行。ちなみに cawelwyrmcawel はラテン語の caulis「キャベツ」の借用語で、 wyrm は現代語では worm 「虫」。
culfre クルフレ dove, pigeon 「鳩(ハト)」。古フランス語の pijon や古英語の dūfe から派生した単語が一般的になったが、culver「ハト」として生存している。
dēor デーオル animal, beast 「動物」。ラテン語の animāle や古フランス語の beste から派生した単語に移行したが、deer「鹿(シカ)」の語源となった。
dūfedoppa ドゥーヴェドッパ pelican 「ペリカン」。古フランス語の pelican から派生した単語に移行。
ened エネド duck, drake 「ペリカン」。古英語の dūcan から派生した duck、低地ドイツ語から派生した drake に移行。
fifalde フィヴァルデ butterfly 「ペリカン」。古英語の butorflēoge から派生した単語に移行。
lēafwyrm レーアフウィルム butterfly 「毛虫」。古フランス語の catepelose から派生した単語に移行。ちなみに lēafwyrmlēafleaf「葉」で、wyrmworm 「虫」。
mereswīn メレスウィーン dolphin 「イルカ」。古フランス語の daulfin から派生した単語に移行。ちなみに mereswīnsea-swine 「海の豚」の意味。
wōrhana, wildhænn モールハナ、ウィルドヘアン pheasant 「クジャク」。古フランス語の fesan から派生した単語に移行。
wyrm ウィルム serpent, snake, dragon, insect 「ヘビ、ドラゴン、昆虫」。ラテン語の serpēns から古フランス語経由で派生した serpent、古英語の snaca から派生した snake、ラテン語の dracō から古フランス語経由で派生した dragon、ラテン語の insectum から派生した insect に移行。なお、wyrm は現代の worm 「虫」の語源。


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