Last update August 27, 2019

コラム:英語学習について考える

味のある熟年世代の英語学習 (1)



人生100年時代到来!

人生50年なんて言われていたのは織田信長の時代で、今はもう21世紀。今の70代なんてまだまだ元気で、80代も負けていません。

「ますます加速する高齢化社会」も社会問題ではあるのですが、だからと言って、年齢とともに重ねてきた人類の財産というものを「もう時代遅れ」だとか「価値がない」と軽視するようなことがあってはいけませんね。

生物は進化しますから平均寿命も伸びるはずです。ちなみに、架空の話ではありますが、「スタートレック」(Star Trek に出てくるバルカン人(Vulcanなどは平均寿命200歳なので、100歳といえばまだ中年、70代でも「ひよっこ」です。そのうち、地球人もオーバー100があたり前の時代になるでしょう。

ともあれ、確かに、厳しい時代を切り抜けるのは若いエネルギーが必要です。熟年にもなると、さすがに100メートル一気に走り抜けることはしんどいわけで、若い能力を活用することに関しては全く反論する(しても仕方がない)気はありません。しかし、長い年月をかけて醸成された味わいというものは「文化」であり、「知恵の宝庫」であるはず。たとえ一時的に「若さで行け行け、ドンドン」の風潮が続いたとしても、文化や知恵といった「豊かさ」が求められる時代が戻ってきます。そうでなければ、人類は滅びるんじゃないでしょうか?





精神の若さをもって

30代、40代、50代…と年を重ねるごとに体力は衰えてくる、これは仕方がありません。人間も生物ですから。科学的に探求したわけではありませんが、肉体といった物質的なものは衰えたり滅びたりすることはあっても、精神や心は年老いたり、滅びたりということはありません。亡くなったおじいさんが教えてくれたことを今でも覚えているという場合は、そのおじいさんの精神が生きているということですから、精神はやはり永遠なわけです。

つまり、年齢を重ねても精神的な若さは失ってはいけないということです。これが、何かを学んだり、習得したりする場合にはとても大切なことだと思うのです。といっても、年を取ると幼児に戻るとか、うちのおじいさんは年をとって我がままになってしまったといった「幼児モード」になることではありません。柔軟性を持つということです。心が若いというのは、柔軟性があることで、押したらすぐ戻ってくる食パンのような「弾力性」とも言えます。

また、年を取ると「頑固」になると言われ、それが気になるのか、かえって自分の意見を堂々と述べるのに躊躇してしまうこともあるかもしれません。「頑固」にもいろいろあって、それが経験や知恵にもとづく「確信」であるのか、若いもんにとやかく言われたくないので意地でも動かないという「老人性ツッパリ」なのか、自分でも見極めがむずかしいところです。

そんなときこそ、「頑固」に「柔軟性」を融合させて、いろんな考え方を想定し、そのうえでどうなのか、ということを検証してみるのもいいかもしれません。「頑固」でもいい、それを「ワシがこう思うからこうなんじゃ!」というのではなく、客観的に説明して、説得できればいいわけです。世の中を長年生きてきた背景があるわけですから、「頑固さ」は熟年のアイデンティティ、それを柔軟性と組み合わせて、良い意味で使っていけばいいと思うのです。

若者とは違う英語アプローチ

ということで、じゃあ、熟年層としての英語の習得の仕方は?ということになりますが、やはり若者とは少し異なる部分があると思います。たとえば最近の若い人たちの間で流行っている(た?)言葉を熟年の人たちが使っても失笑を買うだけで、第一似合いません。可愛い孫娘と会話したいから使ってみた、というのもいいかもしれませんが、真剣に自分の語彙として使うことはあり得ないでしょう。つまり、英語でも同じことが言えるわけで、若い人の使う表現や語彙に対して、それなりの人生経験を積んだ人の使う言いまわしや語彙があるということです。

これは筆者のかつての職場でのことですが、ある帰国子女の若い女性がいて、彼女はお父さんの仕事の関係で小学校から中学年の頃までアメリカにいた人です。そこに50代の彼女の上司がいて、この方は40歳過ぎてから英語を始めて、仕事で英語を使ってきた方です。発音やスピーキングの速さ、リスニングなどは当然、彼女のほうが上ですが、彼女がアメリカにいたのは小学校までですから、使う語彙や言いまわしなども、そのときの日常会話レベルのままです。

もちろんこれはに、日本に帰国後も英語の勉強を続けたかどうかといった「個人差」もあるわけですが、実際のビジネスで使用する単語などは、日常会話とは若干異なります。やりとりする内容も、「何を送った」「着いたか?」「いつ着くのか?」といった単純なものなら良いのですが、仕事の流れのしくみであるとか、方針の考え方であるとかいう高度な内容になると、日常会話レベルではまかないきれないものがあります。

この上司の方はというと、話すスピードもたどたどしいものがあり、リスニング力もそんなに高いレベルではなかったかもしれません。しかし、その立場として、こちらの考え方などを適切に伝えなければならない場合に、適切な言葉を選んできちんと伝えることができます。

モノの見方ひとつにしても、経験や人間を見抜くといった洞察力がありますから、相手の話すこともきちんとポイントを理解できるのです。語彙にしても、若い人たちがつかうスラングや日常会話的な言いまわしは得意でない代わりに、コンセプチュアルなものを説明する抽象的な単語、技術用語などはだんぜん豊富なわけです。





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