言葉の深い意味を極める四文字熟語や古い慣用句などが必要だということではないのですが、「枯れ木も山の賑(にぎ)わい」と言うと「それ何ですか?」という答えが返ってくるの若い世代もいます。しかし、ある年齢になると、会話の流れのなかで、こういった言葉を使ったほうがしっくり来ると感じることもあります。古臭いとかは別にして、そこに何か表現の豊かさを感じるからであって、言葉の遊びというか、余裕や粋(いき)を感じるわけです。 慣用句に限らず、ひとつの言葉の概念をより深く感じることができ、味わうことができる余裕というのは、(もちろん個人差はありますが)若い人たちにはむずかしいかもしれません。人生経験を重ねていないだけに、言葉の概念自体を体感していないからです。翻訳などをしてみても、訳語を辞書から適当に引っ張ってきて「置いている」という感じで、結局意味が通じていないこともあります。これは、若い人が云々と批判をしているのではなく、そういう部分こそ、熟年層の英語を使う人たちがより得意とする分野ではないかと思うのです。 ラテン語源の言葉を狙う「○語数で英語がしゃべれる」とか「英語の語彙には大きく2つの語源の流れがあります。1つはゲルマン系の語彙、もう1つはフランス語・ラテン語系の語彙です。これら2つのタイプの語彙には、それぞれ同じような意味の単語がありますが、前者はどちらかというと「口語的、インフォーマル」、後者は「文語的、フォーマル」な使い方をされています。また、「ゲルマン系語彙」は、英語もゲルマン系であるため、「英語本来の語彙」と呼ばれることもあります。 しかし、その単語と組み合わせる前置詞によって意味が異なってくるため、この組み合わせを覚えるほうが大変です。簡単そうに見えますが、非常に煩雑になります。また、こういったイディオムはまさに、それぞれの英語圏特有の言いまわしの文化でもあり、国によっても微妙に違います。たとえば、「テイクアウト」はアメリカでは ところが、フランス語・ラテン語系の語彙になると、単語としてはスペルも長くなりますが、英語圏によるバラツキは少なくなります。 しかも「フォーマル」な語彙なので、正式な文書や高度な内容を伝える場合は、このタイプの語彙が使われます。論文をはじめ、企業の会社案内や技術マニュアルなどでは、ゲルマン系の言葉よりもラテン語系の言葉を使うのが常識です。というのは、ラテン語系の言葉は、英語固有の言葉に比べて、 とくに、技術マニュアルなどは、安全性に関する事項など命に関わる部分もありますから、いろんな意味に取れるようでは困るのです。さらに、ラテン語系の言葉を使うことで、英語のネイティブではないフランス語、イタリア語、スペイン語などのラテン系言語を話す人にとってもわかりやすいというメリットもあります。 そんなことから、英語を国際語としてみた場合、ゲルマン系の言葉ではなくラテン語源の単語を使うようにすべきだという考え方もあるようです。 話はそれますが、「ゲルマン系 vs ラテン語系」ということを強引に日本語に置きかえてみると、ラテン語源は「漢字」、英語本来(ゲルマン系)の言葉は「ひらがな(カタカナ)」ということができます。 ひらがなは覚えるのが簡単ですが、漢字はむずかしいと言えます。しかし、漢字はもともと象形文字ですから、意味が推測できます。対してひらがなはフラットで、前後の脈絡的なつながりがなければ、それだけでは何を指しているのかわかりません。 ということからも、使いすぎはいけませんが、漢字熟語を効果的に使うことで、会話や文章の成熟度が出てきます。それと同じように、ラテン語源の言葉を微妙に使い分けることで、英語を使う場合の「成熟度」も出てくるのではないかと思うのです。 |