Last update August 25, 2019

コラム:英語学習について考える

フジヤマ、ゲイシャ、ジャパニーズ・イングリッシュ (2)



日本を学ぼう

西洋にはギリシア神話があって、英語の世界では、聖書に続いて、よく引用されたり、ストーリー展開のモチーフになったりすることが多いテーマです。ジャーナリズムの英語においても「一般教養」的な知識として比喩的に使われたりします。それだけ、社会のなかに浸透しているということが言えるかもしれません。

しかし、日本の神話についてはどうでしょう?「古事記」とか「日本書紀」とか、学校の教科書にちらっと出てくるだけで、実際に古事記を読んだという日本人も少ないのではないかと思います。日本の神話というのは、残念ながら、私たち日本人の社会では全くというほど引用もされません。

ところが、専門の先生方によると、この日本の神話に、実は日本人の考え方のルーツがあるということです。私もアマテラスオオミカミくらいしか知りませんが、この神様は女性で、しかも太陽を象徴する神様ということらしいです。ギリシア神話では、太陽の神は男性で、それと比較しても、日本神話というのは何かありそうですね。なぜ太陽の神が女性なのか――こういうところに案外日本人を説明するヒントが隠されているのかもしれません。

何も古事記から始めなければならないということでもありません。もっと身近なことから、たとえば、祇園まつりの由来とか、小野妹子についてのこととか、俳句の作り方とか、茶の湯でもいいですし、狂言についてでもかまいません。食べ物が好きな人はたくあんと味噌汁についてでもいいのです。とにかく、自分の国のことをもっと知ることから始めましょう。そうしてインプットしたなら、次にアウトプットしましょう。アウトプットはもちろん英語です。知り合いの外国人相手に説明してあげるのです。もちろん無理強いではいけませんが。





まわりに外国人の知り合いがいなければ、京都や奈良など観光地に行くとヒマそうな外国人の人がけっこういらっしゃるようです。忙しくて時間に余裕のない人は観光なんかしませんから、観光に来られている方はたいていお時間に余裕のある方だというのが普通でしょう。そういう人に何気なくお近づきになり、これはね、こういうことなんだ、という説明をしてあげてください。無料の観光ガイドですから、たいてい喜んでいただけると思います。ただ、くれぐれも、しつこくつきまとうというようなことがないようにご注意ください(念のため)。

また、インプットから英語で始めるという方法もあります。大きな本屋さんに行くと、日本文化について英語で外国人向けに書かれたものがありますから、それを購入して読むのもおすすめです。内容と英語が同時に身につく「一石二鳥」の方法です。

歴史や観光案内だけではなく、日本の礼儀作法なども重要なことです。日本のビジネス社会に溶け込もうとしている外国人がいたらいろいろ教えてあげましょう。名刺の渡し方、おじぎは何回くらいすればいいのか、またそのときのおじぎの角度は?日本語を勉強している外国人ならば「どうも」という言葉の便利な使い方であるとか、お世話になっていなくてもまず、挨拶のあとは「お世話になっております」と言うのが習慣だとか、それこそいろいろあると思うのです。

日本文化や習慣を説明することによって、外国人の日本に対する理解が深まり、あなた自身も日本人としてのアイデンティティが深まり、当然英語力も向上するというわけです。これは、日本にいるからこそできることで、アメリカに行って、日本でのおじぎの仕方は… なんて言っても冗談にしかなりません。日本人であることに自信を持って、日本にいながら英語を磨き、英語で日本のことをどんどんスピークアウトしようではありませんか。





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