Last update March 22, 2022
アメリカ英語の発音
ロウティック (
Rhotic
) の「
r
」
アメリカ英語の最も顕著な特徴は、母音の後に「
r
」のスペルがあれば、その
/r/
の音をすべて発音するという
rhotic
(ロウティック)
アクセントです。イギリス英語やオーストラリア英語などは、母音の後に「
r
」のスペルがあっても発音しません(「
r
」の後に母音が来る場合は別)。
/r/
の音を発音するといっても、日本語でいえば「らりるれろ」の音が追加されるということではありません。「
英語の発音
」のコーナーでも説明していますが、英語の
/r/
の音
は
接近音
ですので、母音の後に来る場合で音節の最後の文字でもある場合は、「あー」といった感じに聞こえます。たとえば、強引に表記すると、
bar
「棒」という単語は、標準的には「バー」ですが、アメリカ英語では「バーR」、
water
「水」「ウォータ」が「ウォータR」といった音に聞こえるというわけです。実際には、舌先を少し後ろに巻くような感じで発音します。
この「
r
」を
IPA
の発音記号で表記すると、以下のようになります。
単語
標準
アメリカ式
water
/w
ɔ
tə/
/w
ɔ
tɚ/
bar
/b
ɑ
/
/b
ɑɚ/
この
/r/
の音がここかしこに出てくるのがアメリカ英語の特徴で、格調高いブリティッシュ・イングリッシュを話す人たちの中には、「あんなのは英語ではない」などと言う人もいるようですが、どっこい、この「
r
」のスペルを発音するというのは、もともとはイギリス英語の特徴でした。つまり、メイフラワー号 (
the Mayflower
) に乗ったピリグリム・ファーザーズ (
Pilgrim Fathers
) を皮切りにアメリカ移民が始まった17世紀のイギリスでは、「
r
」を発音する
rhotic
アクセントが用いられていたのです。それがそのままアメリカ英語の標準的発音として定着していくことになります。
冒頭で述べた「標準アメリカ英語」以外の英語では、
non-rhotic
の発音が用いられています。初期にアメリカ移民たちが到着した東海岸のニューヨークやボストン地域などの発音・アクセントがそうです。それは、この地域が、移民後も本国イギリスとの密接な関係を維持し、イギリスでの発音の変化などを取り入れていたからだと言われています。その他、南部の州でも、もともとは
non-rhotic
でした。しかし、今では「
r
」を発音しないのは高齢者の話者くらいになってきており、ほぼアメリカ全体的に「
r
」を発音しないのは、古い世代の英語であるとか、あるいは、中流以下のアクセントだと見る向きもあるようです。
前ページへ
|
次ページへ