たとえば、How are you? が「ハ・ウェア・ヤ?」となり、語尾の「g」は落ちる傾向があるので、talking や morning も「トーキン」、「モーニン」となります。「th」の発音もすべてタ行とダ行の音で発音される傾向があり、think や this はそれぞれ「ティンク」、「ディス」、thank も tank も「タンク」、than も Dan も「ダン」となり、母音も訛って「アイ」の発音が「オイ」のように聞こえることもあり、「アイルランド」は「オイルランド」などということに…。(実際の発音については、アイルランド英語の発音をご覧ください。)
質問の答えに yes や no を使いません。たとえば、"Are you coming?" と聞かれれば "I'm coming" あるいは "I'm not coming" と答え、yes や no を使わないのが特徴です。
be 動詞と前置詞 after 完了形を表す
スコットランド英語も同じですが、ゲール語の影響で、「have + 過去分詞」で表す「完了形」は「be 動詞+ after +-ing 形」で表現する傾向があります。"He has gone" 「彼は行ってしまった」は、"He is after going" つまり「行った後」というわけで、"I'm after eating"、"I'm after telling you" などとなります。変形として、"I have eaten my lunch" の代わりに "I have my lunch eaten" という言い方もあります。
have の使い方が違う
次ページで紹介している "Do you have English?" もそうですが、アイルランド英語では have の使い方が異なります。アイルランド語には英語の have に相当する動詞がないことが原因かもしれません。また、所有を表す場合、英語の with に相当する前置詞と me のような所有代名詞で表現するという特徴もあります。たとえば、"Do you have the book?" と尋ねられたら "I have it with me" と答えます。さらに、「彼は酔っ払っている」というときは "He is drunk" と言うのではなく、"He has the drink taken" と言うのがアイルランド風のようです。
再帰代名詞で尊敬を表す
himself や herself など「~自身」という意味の再帰代名詞ですが、アイルランド英語では尊敬や権威のニュアンスが加わり「上司」や「一家の主」などを指す場合にも使われます。たとえば、"Tis himself that's coming" と言うと、そのエライ彼がじきじきに来るというわけです。ところが、"Myself and Tommy went..." といった表現もよくみられます。これは、自分への敬称ではなく、アイルランド語の影響で普通名詞のように使われることも多いからなのだそうです。
古い英語の名残り
スコットランド英語などでもみられる you の意味の古語 ye はもちろん、その複数形の yous、また it is を省略した tis、「学校などをさぼる」という意味の mitch、thing を意味する yoke など、古い英語の単語や表現も残っています。