スコットランド英語の特徴 (1)

       


Last update January 4, 2025

 ゲール語、スコットランド語の影響

「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)のメンバーであるスコットランドですが、発音はもとより、語彙から文章表現、文法まで、イギリス英語とはかなり違う特徴があります。これには、ハイランド地方で話されているケルト語の一種であるスコットランド・ゲール語 (Scottish Gaelic) やローランド地方で話されている古い英語をルーツとするスコットランド語 (Scots language) の影響を受けているという背景があります。

スコットランド英語には、地域や話者によるバリエーションがありますが、ここでは、教育を受けた都市部の中流階級の話す標準スコットランド英語 (SSE: Standard Scottish English) を「スコットランド英語」と定義しています。

 ゲール語、スコットランド語の影響

スコットランド英語のルーツは17世紀までさかのぼります。厳密には、それ以前の7世紀頃に、すでに古英語がもたらされているのですが、それはそのままスコットランド語として発展していきました。そして、17世紀になって、その古英語を起源とするスコットランド語を話していた人々がイングランドとの国境である北イングランドの英語と接したのが、現在のスコットランド英語の始まりであるということになります。それ以後、スペルに合わせて発音が変化したり、スコットランド語からの語彙の借用、あるいは、修正を試みるあまり、勘違いなどによる過剰修正をしてしまうハイパーコレクション (hypercorrection) というプロセスを経て現在のスコットランド英語が確立しました。

 独特の発音

発音の特徴としては、独特な「r」の発音で bird が「ビルド」になったり、herd が「ヘルド」に聞こえたりしますが、使っている語彙も独特で、yes の代わりに ayesmall を意味する wee、若い男性に対する laddie (女性には lassie) という呼びかけなどさまざまな特徴があります。

また、スコットランド英語の発音は、他の英語圏と比べて母音の数が少ないのも特徴です。スペル「r」の音は舌を歯茎にたたくようにして出す音や巻き舌に近くなります。また、facetake などの発音が「フェース」、「テーク」に近くなります。実際の発音については、スコットランド英語の発音をご覧ください。

 独自の文法

文章の作り方にもスコットランド英語ならではの特徴があります。以下、スコットランド英語の文法の違いについてまとめてみました。

 「進行形」をよく使う

他の英語圏に比べてだんぜん使用頻度が多いのが「進行形」です。「あなたは来ますね」という推測の文章も "you will come" ではなく "you'll be coming" と未来進行形になり、さらには、「私は水が欲しい」という状態を表す動詞も進行形にして "I'm wanting water" となります。

 be 動詞と前置詞 after 完了形を表す

アイルランド英語でも見られる傾向ですが、スコットランド・ゲール語の影響で、「have + 過去分詞」で表す「完了形」を「be 動詞+ after-ing 形」で表現する地域もあるようです。たとえば、"He has gone" 「彼は行ってしまった」というのも、このルールに従えば、"He is after going" つまり「行った後」というわけで、"I'm after eating""I'm after telling you" などというわけです。

 その他の独特な文法

スコットランド英語 一般的な英語 意味・解説
I've got the cold. I've got cold. 「風邪をひいてしまいました。」 一般英語では定冠詞の the は不要。
I go to the school everyday. I go to school everyday. 「私は毎日学校に行く。」 一般英語では定冠詞の the は不要。
My hair is needing washed.
(My hair needs washed.)
My hair needs washing.
(My hair needs to be washed.)
「髪を洗わなければならない」。 needs の後は名詞あるいは to be washed とするのが正しい。
Amn't I invited? Am I not invited? 「私は招待されないの?」。 一般的な英文法では、正式には am I not だが、最近では aren't I も認められている。
What age are you? How old are you? 「あなたは何歳ですか?」。構文的に age = you (人間)となるため論理的に成り立たない。


参考

ここはひとつスコットランド人っぽくしゃべってみたいという方は、下記のサイトをチェックしてみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=mALkCGVA2BU
https://www.wikihow.com/Talk-With-a-Scottish-Accent