スコットランド英語の特徴 (2)

     


Last update January 4, 2025

 スコットランド語ルーツの語彙

スコットランド英語特有の語彙の多くは、スコットランド語からの借用です。スコットランド語とは、冒頭にも少し述べましたが、そのルーツは古英語にあります。現代の北イングランドとスコットランド南東部にあったノーサンブリア王国で話されていた英語が、7世紀に移民してきた話者によってもたらされたのが始まりです。その後、スカンジナビア由来のノルド語やローマによるラテン語の影響、さらにはオランダ語などの影響も受けながら独自に発展し、スコットランド語となったわけです。

以下、スコットランド語から入ってきた英語の語彙をいくつかご紹介します。

単語 意味 備考
aye はい (yes) 他の英語圏でも使用
bairn 子供 語源はゲルマン祖語で、現代スウェーデン語、ノルウェー語、デンマーク語の barn も同源
bonnie 可愛い、美しい 語源はラテン語の bonus と推定
canny 順調な、心地よい、優しい 語源は can 「できる」の語源である古英語の cunnan 「やり方を知っている」
braw 素晴らしい、優れた(外見や服装など) brave の変形
dreich 陰気な、(天気などが)陰うつな 語源は古英語の dreog
drouthy 喉が渇いた、乾燥した  
-ie 「小さい」を表す接尾辞 例:laddie 「若い男」、lassie 「若い女性」、shoppie 「小さな店」、sweetie 「お菓子」
haver 無駄話をする 北イングランドでも使用
Hogmanay 大晦日 語源は古フランス語の aguillanneuf 「一年の最後の日」
ken 知っている 語源は古英語の cennan、古ノルド語の kenna 「理解する」
kirk 教会 語源は古ノルド語の kirkja、古英語の cirice
janitor 学校の管理人 語源はラテン語の ianitor 「ドアの管理人」。アメリカ英語でも使用
muckle 大きな  
ned 不良青年、ゴロツキ 貧しい住居に住みラフなスポーツウェアを着た暴力沙汰や軽犯罪を行なう若者
numpty トンマ、のろま、バカ  
outwith ~の外側、~以外 一般的な英語では outside of
peely-wally 顔色が悪い  
pinkie 小指 語源はオランダ語の pinkje (pink + 縮小辞)。アメリカ英語でも使用
remit 職務記述書 一般的な英語では job description
short leet 選考リスト 求人などであらかじめ選考された応募者のリスト
stooshie 混乱 意見の相違や誤解による混乱。語源はおそらく ecstasy の縮小形
scunner 嫌悪 中英語の skunner 「嫌悪のあまりひるむ」
wee 小さい、少ない、時間の早い 語源は古英語の wæg 「重さ」。ニュージーランド英語でも使用

 独自の英語表現

スコットランド以外の人にはわからないユニークな英語表現もスコットランド英語の特徴です。その例をいくつか挙げてみます。

スコットランド英語 一般英語 意味
D'ye no ken? Don't you know? 「知らないんですか?」
I dinnae ken. I don't know. 「知りません」
Where do you stay (bide)? Where do you live? 「どこにお住まいですか?」
I'm black-affronted. I'm very embarrassed. 「とても困惑している・恥ずかしく感じている」
I'm going for the messages. I'm going shopping for groceries. 「私は買物に行く」
She's ages with him. She's in the same age as him. 「彼女は彼と同い年だ」
I'm feeling a bit wabbit. I feel I'm a bit lacking in energy. 「力が入らない、エネルギー不足」
I was chittering at the bus stop. I was shivering with cold at the bus stop. 「私はバス停で震えていた」
Caw canny. Go easy/Don't overdo it. 「ほどほどにしといて(やりすぎるな)」
What (are) ye after? What are you looking for? (What will you have to drink?) 「何を探してるの?」「何飲む?」(パブなどで)
That's outwith my remit. It's not part of my job to do that. 「それは自分の仕事(担当)じゃない」
I'll come round (at) the back of eight. I'll come round just after eight o'clock. 「8時過ぎに着くだろう」
We're all Jock Tamson's bairns. None of us is better than anyone else. 文字通りの意味は「我々はみな Jock Tamson(= Jack Thomson; どこにでもいる普通の人)の子供だ」で、「みな似たり寄ったり、誰も同じだ」(決まり文句)
I kent his faither. He is no better than anyone else. 文字通りの意味は「私は彼の父親を知っていた」で、「たいしたことはない」「誰でもできるさ」(人の成功に対して皮肉を言うときの決まり文句)という意味。kentken「知っている」の過去形、faitherfather のこと。
Ach, away ye go! Oh, I don't believe you! 「冗談だろ?」「マジかよ?」(決まり文句)
Aye, right! Yeah, right! (Definitely not!) 「あ、そう!」「なるほどね!」(「違うだろ!」ということを皮肉って逆に言う表現)