無冠詞の用法
「スペイン語無冠詞について」で、無冠詞の考え方や傾向について説明しましたが、ここでは、実際に、具体的な無冠詞の用法について見てみましょう。
ブルーのマーカーは「そこに冠詞がない」ことを表しています。
職業、身分、国籍を表す名詞
ser, parecer, resultar, considerarse, creerse, hacerse, sentirse, volverse のような
繋辞動詞(主語と述語をつなぐ動詞)の主格補語として、職業、身分、国籍などを表す名詞が
修飾語なしで用いられる場合は無冠詞となります。
Es _ profesor.
(彼は教授だ。)
María es _ española.
(マリアはスペイン人です。)
Ellos son _ católicos.
(私はカトリックです。)
不定冠詞がつく場合
たとえば、下記のような意味になる場合は不定冠詞がつきます。
Es un profesor exigente.
(彼は厳格な教授だ。)
María es una española muy guapa.
(マリアは美しいスペイン人です。)
同格の名詞句
名詞の後に、同格として挿入された名詞は無冠詞になります。
Madrid, _ capital de España
(スペインの首都マドリッド)
el vestíbulo o _ entrada de la casa
(玄関、つまり家の入口)
不定冠詞がつく場合
ただし、次のように名詞が修飾されると不定冠詞がつきます。
Mi amigo, un médico célebre...
(有名な医者である私の友人)
その名詞の有無や存在のみを問題にする場合
tener や haber などの動詞とともに使われ、
修飾語を伴わない場合は無冠詞になります。また、問題とする名詞が脈絡上、1つ以外にあり得ない場合なども冠詞はつけません。
No tiene _ coche.
(彼は車を持っていない。)
No tenemos _ hijos.
(私たちには子供はいません。)
¿Tienes _ tiempo?
(時間ある?)
¿Hay _ médico aquí?
(ここに医者はいますか?)
¿Tengo _ fiebre?
(私は熱がありますか?)
¿Tiene usted _ dinero?
(あなたはお金を持っていますか?)
No tengo _ reloj.
(私は時計を持っていない。)
Estoy seguro de que tiene _ mujer.
(彼には奥さんがいるのは確かだ。)
Hoy lleva _ sombrero.
(彼は今日は帽子をかぶっている。)
不定冠詞がつく場合
不定冠詞をつけると否定の強調の意味になります。
En la calle no se ve ni una persona.
(通りには人っ子ひとりいない。)
No tiene un coche sino tres.
(彼は1台どころか3台も車を持っている。)
主語以外の普通名詞の複数形
動詞の目的語や主格補語である普通名詞の複数形は、意味の限定がない場合には一般に無冠詞になります。
Quiero _ naranjas.
(オレンジを買いたい。)
Estos son _ perros.
(これらは犬だ。)
本の題名やことわざ
本の題名やことわざは一般的に無冠詞です。
_ Guerra y _ Paz
(「戦争と平和」)
_ Sangre y _ Arena
(「地と砂」)
_ Poderoso caballero es _ don dinero.
(地獄の沙汰も金次第。)
_ Agua pasada no mueve _ molino.
(流れ去った水は水車を回さない。)
Más vale _ pájaro en mano que _ buitre volando.
(手中の小鳥は空中の鷹より勝る。)
主語以外の物質名詞
動詞の目的語などで、意味の限定がない(修飾語がつかない)場合は無冠詞になります。
Quiero tomar _ café.
(コーヒーが飲みたい。)
Dame _ agua.
(水をくれ。)
Bebimos _ vino.
(私たちはワインを飲んだ。)
Hemos comido _ pescado.
(私たちは魚を食べた。)
¿Dónde se compra _ leche?
(牛乳はどこで買えますか?)
Póngame _ gasolina.
(ガソリンを入れてください。)
Tengo _ miedo.
(私は怖い。)
不定冠詞がつく場合
不定冠詞がつくと以下のような意味合いが出てきます。
Nos dieron un buen vino.
(私たちはよいワインをもらった。)
Tiene una voluntad de hierro.
(彼は鉄のような意志を持っている。)
He comido un pescado.
(私は魚を丸ごと一匹食べた。)
<前置詞+名詞>で材料、手段などを表す場合
<前置詞+名詞>で材料、道具、手段、方法、原因、否定の表現をする場合、無冠詞になります。
una chaqueta de _ lana
(ウールのジャケット)
cerrar la puerta con _ llave
(ドアにカギをかける)
ir en _ coche
(車で行く)
temblar de _ frío
(寒さで震える)
hombres sin _ trabajo
(無職の男たち)
estar de _ viaje
(旅行中)
Ella escribe mal con _ lápiz mucho mejor con _ pluma.
(彼女は鉛筆で書くと下手だが、ペンではずっと上手い。)
¿Hay alguien sin _ libro?
(本を持っていない人はいますか?)
No se puede entrar sin _ chaqueta ni _ corbata en este hotel.
(上着とネクタイがなければこのホテルには入れない。)
その他の慣用句的な表現
その他、無冠詞になる慣用句的表現をあげておきます。
Sirvió de _ guía.
(彼女はガイドをつとめた。)
Me tomaron por _ actor.
(彼らは私を俳優と間違えた。)
Lo recuerdo desde _ niño.
(それを子供の頃から覚えている。)
Lo aprendí cuando _ niño.
(それは子供の頃に習った。)
Aunque _ niño, él sabe más que yo.
(彼は子供だが、私よりよく知っている。)
El nunca haría tal _ cosa.
(彼は決してそんなことはしないだろう。)
Ahora tenemos que buscar _ otro.
(もう一つのほうを探さなければならない。)
No es otra cosa sino _ excusa para llegar tarde.
(遅れてくる口実以外の何ものでもない。)
No es más que _ motivo de disturbios.
(それは騒乱の動機でしかない。)
Hizo lo mejor posible como _ médico.
(医者としてベストを尽くした。)
呼びかけや感嘆文
呼びかけや間投詞・感嘆文として用いられる名詞には冠詞がつきません。
¿Qué haces?, _ ¡hombre!
(よう!何してるんだ?)
¡Ay!, _ pobre mujer.
(まあ、かわいそうに!)
¡Qué _ edificio tan grande!
(なんて大きな建物だ!)
対句で用いる名詞
2つの言葉を並べて対照的に使う場合、そのどちらの名詞も無冠詞になります。
Vendrá _ padre e _ hijo.
(親子で来るだろう。)
de _ Norte a _ Sur
(北から南へ)
de _ 9 a _ 5
(9時から5時)
las relaciones de _ causa y _ efecto
(因果関係)
科目名など
科目名や習得の対象となるものには冠詞はつきません。
Aprendemos _ biología.
(私たちは生物学を学ぶ。)
¿Sabe escribir (hablar, leer) Ud. _ español?
(スペイン語が書け/話せ/読めますか?)
語順が動詞より後にくる主語
物質名詞や抽象名詞は、主語であっても、動詞より後にくる場合は無冠詞になる傾向があります。
De los grifos manaba _ agua.
(蛇口から水が出ていた。)
Se necesita _ experiencia.
(経験が必要だ。)
Me entró _ sueño.
(私は眠くなった。)
Le falta _ dinero (fuerza).
(彼には金(力)が足りない。)
<名詞+de+名詞>の用法
<名詞+de+名詞>で、ひとまとまりの名詞句を構成する場合、後にくる名詞は無冠詞になります。
este fin de _ semana
(今週末)
el camino de _ campo
(田舎道)
<de+名詞>の用法
<de+名詞>で、「~のような」という形容詞的修飾語になる場合は、無冠詞になります。
sus ojitos de _ ratón
(ネズミのように小さな目)
Tiene gestos de _ verdadera princesa
(彼女は本当の王女のような顔つきをしている。)
2つ以上の名詞を列挙する場合
複数の名詞をリストアップする場合は、それぞれの名詞に冠詞をつける必要はありません。
_ Naturaleza, _ hombres, _ animales, todo estaba dormido.
( 自然も人も動物もすべて眠っていた。)