スペイン語無冠詞について
「スペイン語の冠詞について」の「冠詞の役割」で述べましたが、冠詞には「名詞をインスタンス化する(具体的なものにする)」という機能があります。しかし、文章表現としては、わざわざ具体的なものにする必要もない場合もあります。つまり、その名詞が単数か複数か、あるいは特定のものかそうでないかは関係ないという場合です。ここでは、そういった冠詞を使わない用法を見てみましょう。
スペイン語の無冠詞の傾向をまとめてみると、下の図のようなイメージになります。
まず、「名詞をインスタンス化(具体化)する必要がない」というのを言い換えてみると、「実体のある名詞である必要がない」、あるいは「実体のある名詞だと都合が悪い(違う意味になってしまう)」ということが言えます。そして、それは、どういう場合なのかというと、以下のような大きな傾向があげられます。
修飾語をともなわない
修飾語がないということは、「名詞」として特定・限定する必要性が低いということになります。
主語ではない
文章のなかで行動主でもある「主語」は実体化する必要がある品詞だと考えることができます。それにくらべて「主語」ではない名詞、つまり、「補語」や「目的語」は、上のように修飾語がない場合、わざわざ具体化する必要性が低いと言えます。ただし、「主語」であっても、語順が後のほうに下がり、動詞が先にくるような文章では、後に続く「主語」自体が予測可能で登場感がないため、無冠詞になることもあります。
前置詞をともなった材料、道具、手段を表す名詞
ここで問題にするのは、材料、道具、手段を表すための名詞であり、それが具体的で実体のあるものである必要性はありません。たとえば、「ペンで書く」と言った場合、「ペン」という道具(手段の名前)を言うのであって、それがどんなペンで何本あるかということは関係ないわけです。
対句やリストアップ
「父と子」、「昼も夜も」といった対や対比を表す名詞や、2つ以上の名詞を列挙する場合も、その名詞を具体化する必要はないため、無冠詞になります。
呼びかけ・感嘆
呼びかけや感嘆文で使う名詞も、わざわざ具体的な名詞にする必要はないので、無冠詞になります。
形容詞・副詞的な意味で使われている名詞
「
雪のように白い」とか、「
医者として」といった表現における名詞(下線)にも冠詞はつきません。
具体的な用法については、
無冠詞の用法を参照してください。