「通弁」クリエイティブ翻訳コラム
「通弁」クリエイティブ翻訳コラム

クリエイティブ翻訳ライティングに携わる日常の取り組みにおいて、 気づいたこと、考えたことなどをエッセイ風にまとめています。


 原文のまずさはカバーできない >> 良い翻訳のための良い原文とは

効率的に翻訳表現に没頭できる原稿がポイント
良い翻訳成果物を得るためには、その元となる原文がきちんとしていることが最低条件です。どんな原文が良い原文なのかというと、当然のことながら、翻訳者が効率的に翻訳表現に没頭できる原稿だと言えます。以下、いくつかポイントをまとめてみました。

原文の原稿が未完成でないこと
マニュアルなどで、「この部分は仕様が決まっていないので他の個所から作業を進めてください」といった要望をいただくことがあります。その部分が他の個所と関連が薄い場合はそれでもいいのですが、そうでない場合、他の個所の翻訳も「仮の翻訳」の部分が多くなります。そうすると、仕様が決定した段階で、それに合わせて「修正」しなければならない作業が増えるわけです。件数が多い場合は、人間のやることですから、「修正もれ」が出てくる可能性もあります。

また、画面などのスクリーンショットが原文の言語の画面のままで原稿に入っている場合も同様です。翻訳先の言語の画面の画像が入っていれば、ボタンやメニュー名などがそのまま使えます。つまり、翻訳者が仮に翻訳して(あるいは日本語のまま残しておいて)、後でチェックする人が実際の画面に応じて訂正するといった無駄なプロセスが省けます。

原稿が正確であること
たとえば「10以下ならA、10以上であればB」といった「うっかり」表現がされている場合、通常では、「10以上10未満」なのか「10以下10を超える」のどちらかであるべきで、10はいったいA、Bのどちらに該当するのか悩むことになります。そのまま直訳しても読者が悩むことになります。

また、パターン的な文章が多いマニュアルなどで、他の箇所をコピーペーストしたまま、該当箇所に応じた編集がされていない文章も見受けられます。その他、「補完」と「保管」といった、どちらでも意味が通じそうな微妙な漢字の変換ミスもよくあります。

原稿や資料に矛盾がないこと
原稿の正確さと関連しますが、同様の情報が複数の箇所で掲載されている場合があります。そのときに、ある箇所で書かれていることと別のところで書かれている内容に矛盾がある場合も効率を妨げる要因となります。

あるいは、翻訳用の原稿だけでなく、複数の参考資料を提供していただくこともありますが、その場合、資料間で矛盾があることがあります。参考資料はできるだけ多いほうがいいだろうという心配りはありがたいのですが、どちらが正しいのか判断に悩みます。その都度確認するのも効率をそがれます。複数のソースがある場合は、その位置づけや優先順位などをつけていただくこともポイントです。

後出しジャンケンはNG
未完成の原稿とも関連しますが、翻訳作業が進んでる最中に原稿に修正や追加が入るという場合がよくあります。変更が一部のみに関連するものであったり、その箇所がまだ作業未の部分であればさほど問題はないかもしれません。しかし、文書全体に影響する内容であれば、作業を止めて最初からの見直し、修正作業が発生しますので、著しく効率を下げることになります。また、修正を反映する作業においても「反映もれ」などのミスが発生する原因ともなります。

実際には、翻訳発注後の修正や追加がゼロということは不可能かもしれません。しかし、その程度によっては、いったん作業工程を止め、修正作業も含めて一から仕切り直しをする必要が出てくるのです。

原文がわかりにくい
文章作成を本業とするプロのライターが書いた文章であれば、こういった問題は起こりにくいのですが、最近の傾向として、経費節減のため、プロではない担当者によって書かれた文章にその傾向が見られます。もちろん、書いた本人は理解しているのですが、自分が理解できる文章を書くことと、一般の人々(第三者)読んでわかりやすい文章を書くことはまったく別物です。そのために、プロのライターはそれなりの修練と経験を積んでいるのです。

プロでなければ文章は書けないとは言いませんが、まず原文の解読、謎解きから始めなければならないような文章では、当然のことながら、良い翻訳物をアウトプットすることはむずかしいです。同様に、社内向けの翻訳とは言え、自分たちの組織内でしか通用しない社内語や略語を散りばめた原稿をそのまま外部の翻訳者に丸投げというのも乱暴なやり方と言えるでしょう。誠意のある翻訳なら想像力を働かせて適切な訳語を探したり、いちいち問い合わせの質問をしてくるかもしれませんが、翻訳作業の効率を大きく損なうことに変わりはありません。

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