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Last update April 7, 2020 (Originally posted October 22, 2010)

英文広告例 (6)

楽しい英語 CM


UPS TV Commercial (Source: UPS TV Commercial)


最近CNNでよく流れているのがこれ、United Parcel Service(略して UPS)のコマーシャル。UPS とは、アメリカ合衆国を本社とする国際貨物航空会社。耳に親しみやすいメロディーで、ロジスティックス(物流・情報管理)という概念をうまく盛り込んだ楽しい CM です。

経済不況の昨今、広告の世界も世知辛くなったもので、どこかの保険会社さんのような「パワーポイントのほうがまだまし」と思わせるような、退屈な静止画像と長々と一方的に言いたいことだけを述べた CM (申し訳ないですが、この CM が流れると筆者は必ずチャネルを変えます)があるなかで、久しぶりに「お!」とアテンションを引く楽しいコマーシャルです。

この時代、どこの企業さんも大変で、まず広告宣伝費や交際費から削減するというのは理解できます。しかし、視聴する側からあえて独断と偏見で言わせてもらうなら、観たい番組を遮って流される CM ならば、せめて楽しいとか、美しいとか、感性にプラスになるものにして欲しいもの。そこまで予算をかける余裕がないなら、いっそのこと流さないほうがいいのでは?(テレビ局さん、ごめんなさい)というのが、一視聴者としての勝手でわがままな本音です。実際の商品を購入するときは、インターネットやカタログなどで決めるのが普通で、テレビの CM は「商品のイメージアップ、高感度アップ」を狙うべきだと言えるでしょう。

というわけで、これがその CM

https://www.youtube.com/watch?v=mXSFo4DSleA

そして、歌詞はと言えば、一般の人にはちょっと何のことか理解しずらい内容かもしれませんが、製造業関係など、実際にロジスティックスを利用する人から見れば、「なるほど」と思わせる内容になっています。That's Amore という歌のパロディーで、That's Amore という部分を that's logistics に置き換えて、ロジスティクスの定義をきちんと盛り込みながら、メロディーに合わせているというのがニクイです。ご参考までに、( )内に訳をつけておきます。

UPS TV Commercial 歌詞

When it's planes in the sky for a chain of supply, that's logistics.
(サプライチェーンで飛行機が飛べば、それはロジスティクス)

When the parts for the line come precisely on time, that's logistics.
(ラインに部品がジャストインタイムなら、それはロジスティクス)

A continuous link that is always in sync, that's logistics.
(流れが途切れず同期してたら、それはロジスティクス)

Carbon footprint reduced bottom line gets a boost, that's logistics.
(カーボンフットプリント削減で利益が増えたら、それはロジスティクス)

With new ways to compete there'll be cheers on Wall Street, that's logistics.
(競争力の高い新手法でウォールストリートも喝采、それがロジスティクス)

When technology knows right where everything goes, that's logistics.
(技術でモノがどこにあるかをしっかり把握、それがロジスティクス)

Bells will ring, ring-a-ding, ring-a-ding, ring-a-ding, that's logistics.
(ベルが鳴る鳴る、リン、リン、リン、それがロジスティクス)

There will be no more stress 'cause you've called UPS, that's logistics.
(UPSに頼んだからイライラもなくて、そう、それがロジスティクス)

というわけで、何度も出てくるこの「ロジスティクス」をはじめ、聞きなれない用語などを解説してみましょう。





ロジスティクスとは、一言で言えば、「サプライチェーンにおいて、材料調達、生産、消費までの物、サービス、情報の流れとその保管を管理すること」と説明することができます。では、その「サプライチェーン」って何?ということになりますが、これは、ビジネスにおいて、部品や資材を調達し、商品を生産し、卸売りや小売り(流通)を通じて顧客に届くまでのモノの流れを表す概念です。これを管理することを SCM (Supply Chain Management) などと呼んでいますが、コスト削減やムダを省くための改善策、あるいは、最近のように商品のライフサイクルが短くなってきたり、環境保護を考慮した場合、このサプライチェーンをしっかり管理しておく必要があります。そんなサプライチェーンにおいて、物やサービス、情報がどう流れるのか、どう保管されるのかという部分をきちんと、最適に管理していくのがロジスティックスということができます。

ですから、歌詞のように、
サプライチェーンにおいて、資材や商品などの物を運ぶのがロジスティックス。当然、グローバル時代ですから、飛行機も飛びますね。また、生産ラインには調達した部品が正確な日時で到着しなければなりません。これを製造業の用語では、「ジャストインタイム」と言いますが、まさに、「ジャストインタイム」でなければならず、遅れるのはもちろん、「今回は早めに完成したのでとりあえず送っときます」など早く着きすぎるのもダメで、「こんなに早く仕上げてくれてありがとう」などと感謝される業界ではありません。第一、置いておく場所も取るし、余計なリスクを抱えることになります。

また、「カーボンフットプリント」は、直訳すれば「炭素の足跡・面積」となり、企業活動などで排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの影響を測る指標。材料や部品を調達する場合も、使ってはいけない物質などが決められていて、これもしっかりサプライチェーン内で規定・管理されているのが現状です。

さらに、追跡技術を使って、荷物が今どこにあるのか、移動しているのかという把握も欠かせません。ロジスティクスの部分だけでなく、サプライチェーン全体では、たとえば、商品のどこかの部分が不良・故障すれば、それはどの業者からいつ調達されたかということまできっちり追跡するしくみが求められるわけです。

まさに、今どきのビジネスの傾向や流れがよくわかる歌詞になっていると言えるでしょう。

ちなみに、これは、元歌となった That's Amore です。
https://www.youtube.com/watch?v=vLCWxOY1Lhk