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Last update April 7, 2020

英文広告例 (7)

おかしな英語タグライン


Smartphone Tagline


これはある韓国系メーカーの商品のタグライン(tagline)についての失敗例です。もちろん、これは過去の話で、現在はこのタグラインは使われていないと思いますが、いちおう参考までに挙げておきます。

まず「タグライン」について説明しておくと、広告やコマーシャルなどで、商品や企業の名前のあたりに入るスローガンやキャッチフレーズのようなものを言います。

その商品とは、Android を搭載したスマートフォンでした。ロマンチックでドラマチックな美しいシーンが英語のキャッチとともに流れ、人生のいろんな場面で活躍する商品をさりげなくアピールしたいというコンセプトがあったようで、それを総括する形で CM の最後に出てくるのタグラインが Designed for Humans というものでした。

最初に耳にした瞬間、「ん?」という違和感を感じてしまいました。せっかく目に心地よいシーンでいい気分になっていたところで、最後に「ガクッ」というものがあります。その昔、とある日本の化粧品会社のスローガンに For beautiful human life というものがあり、「ヘンな英語」だというので(広告業界で)話題になったものですが、なんだかその二の舞だなというものを感じたのです。

つまり、意地悪い観方をすれば、「すると、何でしょう?今までお作りになってたのは動物向け?それとも、他社の商品なんて所詮アニマル仕様だが、御社のものは違うと?」なんてことになりますね。実際、日本では「犬」のお父さんが携帯電話を使うような設定もありましたが…。

ひょっとしてこんなことを気にするのは自分だけか?と思って、念のため Google で検索してみると、やはり出てきましたね、いろんな意見が。「○○(企業名)に聞きたい。じゃあ他の商品は動物向けか?」とか「鳥が使うか?牛が使うか?」、「エイリアン向けじゃないってことか」などなど。商品に魅力を感じている人は「スローガンはヘンだけど、まあいいじゃん」という意見もありますが、「今まで見た中で一番イライラする CM だ」という厳しいものもあるようです。

もちろん、本気で動物だの宇宙人だのとの差別化を考えて作ったのではなく、人間としての人生のドラマとともにある身近な商品をイメージし、「ヒューマン○○」と言えばカッコイイのでは?といった発想だと思われます。もっとも、この CM がリリースされるいろんな段階で、英語圏のネイティブの人たちの意見もあったと思うのですが、「いや、トップがこれを気に入っているので、これで行きます」というような、日本でもそうですが、本当に正しい意見を採用するというよりは「上を向いて仕事をするような」雰囲気があったか、それとも、英語としておかしいのを承知で、話題性をめざしてあえてこの案を使ったのか――などと勝手な憶測をめぐらしている次第です。

というわけで、グローバル展開する場合はくれぐれも注意したいものです。そのためにはやはり、企業側も潤沢な予算を準備することも大切ですね。「短い文言ひとつにそんなお金はかけられない」なんてとんでもないですね。ネーミングもそうですが、タグラインなどにはいろんなリサーチも必要になります。たとえば「一式数万円で10案以上考えてくれ」といった慎ましやかな予算ではむずかしいと思われます。

また、「日本国内でしか展開しないので、日本人にウケるテキトーな英文でいいです」というクライアントさんもたまにおられます。「日本市場でのみの展開」などと言っても、30年前ならよかったかもしれません。それとも、ネット環境には一切掲載しませんというのならまだいいのかもしれませんが、街の雑貨屋さんならまだしも、ビジネスであればそんなことは現実的に無理ですよね。つまり、いまや「国内のみ」などと言っても、ネットに掲載すればグローバルと同じです。それも、おかしな英語表現なら、英語圏の人(けっこう意地悪な人もいますので)に笑われて一斉に広まるなんてこともあるのです。いっそのこと、アルファベットは使わずにカタカナ表記なら問題ないと思いますが、それじゃあデザイン的にスマートじゃないなどということにもなりますよね。

いずれにしろ、常にグローバル視点に立った制作物づくりが必要だと言えるでしょう。