英文コピー実験室
「柿の種」パッケージ
商品のパッケージデザインの基本は目立つこと。よって、パッケージや袋の表面は商品名や特長は短い文章で、目立つ色使いをしており、しかも大きな文字で書かれています。お店では他のメーカーの商品と並べられますから、目立たないようではまず買ってもらえません。
右の写真は英文コピー作成時のものとは異なるため、参考イメージとしてとらえてください。また、下に抜き出した日本語テキストもコピー作成当時のものです。英文コピー案は、最初に作成したものを現在のトレンドや状況に合わせて一部書き直しています。なお、日本語テキストと英文テキストを対応させるため、便宜上番号をつけています。
日本語テキスト (SOURCE:亀田製菓株式会社「柿の種」より)
(1) けなげ組
(2) 会員番号47
(3) うす
(4) そりゃあボクのお役目は心得てるし、年に何回も出番はないんだからガマンはするけどサ… くそ熱いモチ米を入れられて頭のテッペンをこれでもかっ!!てドスン!!ペタン!!とどつかれる… 頭痛薬の1つも欲しいヨナ… あげくはガラス置かれて民芸風テーブル…
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英文コピー案
(1) Unknown Heroes
(2) Member No. 47
(3) A Mortar
(4) I know who I am and what I'm for, and I cannot complain as I'm not called up so often in a year. But do you know what it's like? To be forcibly fed with cooked glutinous rice that's hot as hell and pounded in the top of the head again and again... thump, thud, thud... Hey, mister, do you have some headache medicine? And I know my career will soon end up as a country-style table with a glass sheet placed on my head...
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備考
ビールのおつまみなどでおなじみの「柿の種」。食べたらゴミ箱にポイの袋ですが、その裏面はけっこう頑張っています。どうせ読まれない裏面だけど… というのがコンセプトかなと思ってしまうような、その名もずばり、「けなげ組」というタイトルのコーナー。まさに、企業さんとしては「けなげ」な取り組みなのかもしれません。このコピーを読んでいてもなんか泣けてくるような(別に泣きはしませんが)「けなげ」なモノたちが紹介されています。
で、むずかしいのがこの「けなげ」のニュアンス。国語辞典によると「見かけは弱いがその働きはたくましい」といった定義がしてあり、和英辞典になると brave とか praiseworthy といった積極的な訳になっており、どこか「悲哀」を伴わせ、ここまで一生懸命に… といった「可愛さ」といったニュアンスが表現できません。英語にはない「ウェット」な情感とも言えるでしょう。ここでは、評価されなくても頑張っている「無名の英雄」といったタイトルにしてみました。「悲哀」を漂わせるなら Lonely Heroes などとすることもできます。また、「組」を表現したい場合は、Unknown Heroes Circle などとすることもできるでしょう。
ただ、英語圏では、日本のように無生物を人間化して表現するという手法はどこか子供っぽい感じがあり、日本のカタログなどでスイッチや電源に顔や手足をつけてマンガ表現したものなどは「幼稚」だと取られる場合もあるようです。したがって、人間化を前提とした表現自体に違和感があるかもしれません。無理やり To be Personified xxx「人格化したモノたち」といったタイトルにし、身の回りのモノを人格化してしゃべらせるコーナーと位置づけてしまうのもひとつの手かもしれません。まあ、「なんでそんなことをするのか?菓子とどういう関係があるんだ?」と言われればそれまでですが。
蛇足ですが、ここで紹介されている餅つきのときに使う「うす」。もちろん英語圏には全く同じものはないと言ってよいでしょう。英語圏に展開するのであれば、現地でよく使われているモノに差し替える必要があると思われます。
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