Last update May 29, 2021

古英語の発音とスペル (2)

古英語のスペル

いちいち辞書を引いて発音を確認しなければならない現代英語と異なり、古英語では、スペル通りに読めば正しい発音ができました。つまり、スペルと発音が一致していたわけです。

また、現代英語の knight のように、単語の頭の k や途中の gh は発音しないといったわけのわからないルールもなく、古英語ではしっかり発音し、「クニーフト」あるいは「クニッフト」のような音になっていました。ただし、スペルは現代と異なり、cniht でした。

古英語の文字と発音表

以下に、古英語の文字と発音の対比表をまとめておきます。

文字 発音 説明
a /ɑ/, /ɑː/
ā /ɑː/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
æ /æ/, /æː/
ǣ /æː/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
b /b/, [v] 8世紀以前には [v] の発音をするものもあった。
c /k/, /tʃ/ /tʃ/ の発音をさせる場合は、ċ, č, ç などの表記がされることもあった。
cgc [ddʒ], /ɡɡ/
d /d/ 初期のころは /θ/ の音も表記した。
ð /θ/, [ð]
e /e/, /eː/
ē /eː/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
ea /æɑ/, /æːɑ/
ēa /æːɑ/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
eo /eo/, /eːo/
ēo /eːo/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
f /f/, [v] /f/ の有声音 [v] の表記にも使われた。
g /ɡ/ /j/[dʒ] の表記にも使われた。
h /h/
i /ɪ/, /iː/
ī /iː/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
ie /iy/, /iːy/; /e/, /eː/
īe /iːy/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
io /iu/, /iːu/
k /k/ 古英語では k の文字はほとんど使われず、代わりにc が使われた。
l /l/
m /m/
n /n/
o /o/, /oː/
ō /oː/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
oe /ø/, /øː/ 方言によっては存在しない。
ō /oː/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
ōe /øː/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
p /p/
qu /kw/ cƿ と表記されることが多く、このスペルはほとんど使われなかった。
r /r/
s, ſ /s/, [z]
sc /ʃ/, /sk/ /sk/ の頻度はまれ。
t /t/
th /θ/ 初期の記述
þ /θ/, [ð]
u /u/, /uː/ /w/ の表記に使われることもあった。
uu /w/ /w/ の表記に使われることもあった。
ū /uː/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
w /w/
ƿ /w/ 初期のころは /w/ の表記に使われたが、p との混乱を防ぐため w に移行。
x /ks/
y /y/, /yː/
ȳ /yː/ 古英語の長母音を表すために近代になってから設けられた表記。
z /ts/


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