Last update June 20, 2022
「l」と「r」の音の本質 (2)
明るい「l」と暗い「l」
では、今度はイギリス人男性と女性の「l」の発音を聴いてみましょう。
微妙な違いでわかりにくいかもしれませんが、前ページのアメリカ英語にくらべて、こちらのほうがなんとなく「明るい」感じがしますね。「はっきりした l」とか「軽い l」とも言えるでしょう。とくに女性の発音は「ラ・ラ・ラ…」と楽しげにさえ聞こえます。
これはどういうことかというと、アメリカ英語の「l」とイギリス英語の「l」の発音は少し違うのです。アメリカ英語のような「l」の発音を「暗い l」といい、イギリス英語のような「l」の発音を「明るい l」と呼んでいますが、その違いは、舌先が上の歯ぐきの裏側なのか、歯の裏側に付着しているかの違いです。
図示すると次のようになります。
つまり、向かって左側の「Light l」がイギリス英語の「l」の発音で、右側がアメリカ英語の「l」の発音なのです。
実際に自分でやってみてもわかりますが、舌先を上の歯の裏側につけると、舌全体が伸びる状態になります。しかし、歯ぐきの裏側に舌先をつけると舌全体が少し下がるため、舌の中心が図のように盛り上がるわけです。この「盛り上がり」の部分が空気の流れに影響を与え、少しこもったような感じの音になるわけです。(「明るい l、暗い l」については「世界の英語―子音の変化について」でも説明しています。)
この「明るい l」は単語の最初にくる「l」や子音の後の「l」の音に適用され、bill、tell などのように単語の語尾にくる場合は、イギリス英語であっても暗い「l」の音になります。イギリス英語ではこのように2つの「l」を使い分けているわけです。(ここでいう「イギリス英語」とは伝統的なイギリス英語のことで、地域などにより異なるバリエーションは該当しません。)
自分が発音する場合には、イギリス式かアメリカ式かのどちらかに統一しておけばいいのですが、相手の英語を聴きとる場合になると、両方のパターンを聴きとれなければ意味がありませんので、しっかりとマスターしましょう。
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