Last update June 20, 2022
「l」vs「r」聴き分け戦略 (5)
単語の最初にくる l と r の聴き分けは、出だしに注目することで(すべて正解は無理だとしても)かなり識別能力がアップするはずです。ところが、そこに別の子音が結合するとさらに難易度が高くなります。ここでは、 cl, cr, gl, gr などの音の聴き分けにチャレンジしてみましょう。
まず、glass、grass の発音を聴いてみましょう。
明瞭に違いがわかるという人は、ここから先はパスしていただいても結構です。
しかし、どこが違うのかわからないという人もいるかもれません。出だしの音をつかもうと思っても、その前にくる「g」の音の影響を受けるため、l や r の純粋な音を取り出すことができませんね。
では、念のため、前半と後半に分割したファイルとスローで再生したものを聴いてみましょう。(分割は正確に測定して行ったものではなく「耳分量」です。)
glass / grass の分解
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glass |
grass |
前半 |
gla- の部分
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gra- の部分
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後半 |
-ass の部分
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-ass の部分
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スロー再生
スローで再生してもあまり違いが聴き取りにくいかもしれませんが、分割した音の前半を聴くと、スロー再生であっても普通のスピードであっても、「グラ」の「ラ」の部分が明らかに違うことがわかりますね。
gl のほうは、 gr のような「舌の丸まり」の音が聞こえません。よく聴くと、gl の g と gr の g もどことなく音色が違うような印象です。「g」の音を発音しながら、舌先が上方向や後方に移動することから違いが出てくると言えます。
ということで、違いをまとめてみると次のようになります。
gl |
gr |
g の音の後に、舌先が上の歯ぐきや歯の裏側に触れた瞬間の「詰まった」ような音
「g」の音が「グ」というよりも「ギ」や「ガ」に近い音になったり、明るい音色になることもある。
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g の音の後に、舌先が後ろに丸まる「くぐもった」ような温かみのある音になる
「g」の音は「グ」に近い音になったり、こもった音色になることがある。
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以上のようなことから、gl や gr から無理やりに l と r を抜き出そうとするのではなく、l と r に注意しながらも、1つの結合した音としてとらえたほうが現実的だと言えます。
ちなみに、以下は、「アメリカ女性」(AMF)、「アメリカ男性」(AMM)、「イギリス女性」(BRF)、「イギリス男性」(BRM) の発音による gl と gr の発音です。
ということで、子音と結合した l や r の音を聴き分ける戦略は…
l や r の音に注意しながら、
1.結合した音の出だしの瞬間をつかみ、
2.それに続く音色を聴き分ける
ということになります。
以上、 gl や gr の音を例にとって子音と結合した l や r の音について説明してきましたが、他の子音であっても、g の部分を置き換えるだけで応用がきくはずです。
実際には、「l」vs「r」サンプルリストにある「l」vs「r」BlBr リストなどの音のリストを何度も聴き、音の特徴をつかむようにしてください。
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