Last update August 27, 2019

コラム:英語学習について考える

可能性広がる若年層の英語学習 (2)



スペシャリストかジェネラリストか?

これからは「スペシャリスト」の時代だ、などと言われますが、語学を活かした仕事をするには「ジェネラリスト」でなければいけません。

言いかえれば、英語のスペシャリストであるためには、いろんなことを知っておく必要があるのです。というのも、言語学などの、英語自体を研究する場合をのぞいて、英語は手段でしかないのです。

しかし、手段であるだけに、高いレベルが要求されますし、それによって伝達する内容も何が出てくるかわかりません。プロともなれば、よほど専門的な内容でないかぎり、「この業界はできません」とか「こういう内容は無理です」ということは言えないわけです。言えないことはありませんが、それが戦略の一部でもないかぎり、自分のビジネスチャンスを狭めることになります。

また、さすがに今は少なくなったと思いますが、かつては、英語を理解しない人にとっては、英語ができるということは、どんな分野のどんなことであっても、英語で書かれているかぎり理解できるはずだ(できなきゃおかしい)と思い込んでしまう人もいました。「翻訳」や「通訳」という仕事についても、「英語で話している(書かれている)ことをそのままどんどん日本語に置き換えればいいだけだろ?」とか、「誰が訳しても同じだろ?」と思っているわけですね。

あまりにも理解度が低すぎると言えますが、英語のスペシャリストに対する実際のニーズとしては、それほど遠いとは言えません。なぜ英語のスペシャリストが必要かと言えば、英語が得意でない人がいるからであって、世界中のすべての人が高い英語力を持つようになれば、英語を使って仕事をしている人材は必要なくなってきます。英語が得意でない人がいるために必要とされる英語のスペシャリストなのです。ですから、「英語のスペシャリスト」とは「英語のできるジェネラリスト」でなければ意味がないのです。

もっとも、英語は得意だが自分でやっている余裕がない(その立場ではない)という人もいますが、その場合も、依頼者ができるだけに、より高いレベルのものを要求されることになります。

つまり、通訳や翻訳をするときに、その分野の知識や造詣がないときちんとした仕事はできないわけです。これも昔話で恐縮ですが、マッキントッシュのコンピュータが出はじめたころ、Apple Computer を通訳者が「りんごコンピュータ」と訳したという話は有名です。JavaBeans というプログラムを「ジャバ豆」と訳してしまったという例もあります。英語自体のレベルアップも磨きつづけなければいけませんが、いろんな業界の新しい知識も必要になってきます。最近ではインターネットでたいていのことは調べられますから、こういった基本的なミスはないにしても、ベースとなる基本知識がないと、ポイントを押さえた訳というのはできないものです。

もちろん、「通訳や翻訳をやろうとしているのではなく英語を使う環境で働きたいんだ」という人もいるでしょう。そういう人は、英語だけでなく、その企業や職種においての専門分野の知識や理解度がポイントになります。国際企業で英語圏の人たちと互角に渡りあって行こうというのであれば、英語のほうも英語圏の人に近いレベルでなければ話になりません。

とはいえ、日本で生まれ育った人であれば、どうしてもハンディがあります。英語は英語圏の人より落ちる、専門分野の知識は同レベルとなると、当然、あまり重要な仕事は任せてもらえません。彼らと差別化できる何か――それは、英語以外のところ、つまり、専門分野でいかに差別化を図るか、ということになるのです。いずれにしろ、エイゴ、エイゴとエイゴばっかり勉強していても、あまり効果の上がるものでもなさそうです。





食わず嫌いをなくす

では、そういった幅広い知識を身につけるにはどうしたらいいかということになると、とにかく若いのですから、何でも食べます。といっても勉強のことで、「これは嫌い、これは好き」なんて言っていては知識は広がりません。いろんな経験を積むことも大切です。会社で仕事をしている人なら、「こんな仕事は私がやる仕事ではありません」などという「いいカッコ」をしないことです。日本の会社では、まだまだアメリカ社会のように役割分担が明確化されていませんから、あまり頑(かたくな)なな態度を取ると人間関係もうまく行かないばかりか、人間としての幅が広がらないと思うのです。

たとえば、まわりのみんなが協力して荷物を運んでいるときに、「オレはデザイナーだ。荷物運びなんてできるか」と言ったりする人にかぎって、ろくなデザインはできないものです。多少意に添わないことを命令されたりしても、新しい世界にチャレンジ!といった明るい気持ちでのぞみたいものです。





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