スペイン語文法ノート 英語のように「be 動詞+過去分詞」で「受身」の出来上がり―というのもいいのですが、言語が違えば考え方も異なります。やはり、情熱の言語というわけか、そもそも「受動態」といった消極的(?)な言い回しを好まないスペイン語。その受動態のカタチとは?




スペイン語の中間態


Última actualización: 17 de abril 2016


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能動態と受動態の間のグレーゾーン

スペイン語の能動態 (voz activa) と受動態 (voz pasiva) について見てきましたが、世の中の物事というのは、デジタル表現のように「1 か 0 か」の 2つの選択肢のうちどちらかに必ず当てはまるというものではなく、両極の概念があれば必ずその中間のグレーゾーンが存在するものです。文法の世界においても、能動態でもなく受動態でもない、その中間にある「中間態」(voz media)というものが存在するというわけです。

ただし、必ずしも「これが中間態だ」という文型があるわけではないため、「能動態」と「受動態」という2つの分類のなかに統合されているだけに他なりません。

スペイン語においても、受身表現同様、「この文章構造になれば必ず中間態だ」という唯一定まった形はないので、文法的にもカテゴリーとして認知することが困難だと言えるでしょう。そういうことから、スペイン語には「中間態はない」という文法学者もおり、またしても「あるような、ないような」というのがスペイン語の中間態ということになってしまいます。受動態だけではなく中間態もないのかあるのか、はっきりしないというのでは、一体スペイン語はどうなっているのか?と頭をかしげてしまうところです。

これは、、スペイン語の受動態の考え方歴史的考察でも述べましたが、「線引き」の問題で、行動主に視点があるものが「能動態」で行動主から視点がそれたものが「非能動態」という区分けをしておけば理解しやすいと思われます。そして、この「非能動態」の区分のなかに、中間態と受動態が含まれているというわけです。


言いかえれば、非能動態から「受身」を除いた残りが「中間態」であるとざっくり位置づけることが可能です。中間態に対して神経質になる必要はありませんが、この概念を頭に入れておくことで、三人称再帰代名詞se を使った用法などがより理解しやすくなると思われます。





はじめに中間態ありき

「中間態」というのは聞きなれない概念でもあり、能動態と受動態の間に便宜上付け加えられたものではないかというイメージを持ってしまうかもしれませんが、そもそもスペイン語の親であるラテン語の、そのまた親であるインド・ヨーロッパ言語(lenguas indoeuropeas)では、「能動態」と「中間態」の二種類の「態」しかなかったようです。

つまり、「中間態」が先に存在し、そこから派生してできたのが「受動態」だということです。ですから、「中間態」についてこだわる必要はないのですが、インド・ヨーロッパ言語の子孫であるスペイン語に「全く存在しない」というのではちょっと理屈が合わないようなことになってしまいます。

では、中間態とは感覚的にどんなものなのか、まず、簡単な英語の例で考えてみましょう。

Car dealers sell cars.
(ディーラーは車を売る。)―能動態(他動詞)
Cars are sold by car dealers.
(車はディーラーによって売られる。)―受動態(他動詞)
The car sells well.
(その車はよく売れる。)―中間態(自動詞)

文法では、態の基本的な考え方として、動作主が主語であり受動主としての目的語を取る場合は能動態、逆に受動主が主語になるとその文は受動態であるということが言えます。

上の最初の例では、動作主である「Car dealers」が主語で、「cars」という目的語(受動主)を伴う能動文ですが、二番目は「sell」という動作の影響を受ける受動主「cars」が主語になった受動文です。ところが、最後の例では、受動主が主語なので受動態の条件を持っていますが、「sells」という動詞の形は受動態ではなく能動態に見えます。このような能動態でも受動態でもない、あるいは、能動態と受動態の両方の特徴を持っているような文が中間態です(mediopassive 「中間受動態」といった分類をする場合もあります)。


別の観点からみると、主語が目的語に対して「外的影響を与える」のが能動態で、主語が他者によって「外的影響を被る」のが受動態、そして、「内的影響を与え、自分自身が被る」、つまり、動作とその影響が主語自身のなかで自己完結しているのが中間態だと定義することができます。受動態では、主語になる受動主は一方的に影響を被るばかりで、全く動詞のアクションには参加しませんが、中間態になると、主語が動詞のアクションに関与することになります。

また、文章に登場する参加者(事物)としては、上の例では、能動態と受動態では「car dealers」と「cars」の2つがありますが、中間態では参加者(事物)は1つだけ(主語のみ:the car)となります。

動詞については、能動態と受動態も他動詞でないと成立しないため「他動詞」、中間態では「自動詞」(スペイン語では自動詞的な動詞の形)になります。

中間態としての条件をまとめてみると、以下のようになります。

主語が動作主なのか受動主なのかが定義できない(両方の要素を持っている)
目的語が不在である(文章に登場するのは主語のみ)
動詞が自動詞である
主語が動詞のアクションに参加・関与する

さらに、能動態、受動態と比較してみましょう。

項目 能動態 中間態 受動態
主語 行動主 行動主/受動主 受動主
目的語(直接) あり なし なし
登場物 2体(主語+目的語) 1体(主語のみ) 2 (1) 体(主語、行動主)
動詞 他動詞 自動詞 他動詞
動作 参加する 参加する 参加しない
影響 外的に与える 内的に与える/受ける 外的に受ける





スペイン語の中間態

では、スペイン語の中間態について詳しく見ていくことにしましょう。

最初の項で述べましたが、能動態、受動態、中間態のそれぞれの活用を持つギリシア語などとは異なり、スペイン語には「これが中間態」だという形がありません。基本的に、再帰代名詞と動詞を組み合わせた「代名動詞」の形を取ります。主語が三人称になる場合は、一見して再帰的受身と見分けがつきにくいのですが、もともと「受身」も「中間態」も定義や線引きがあいまいなので、それも無理からぬことだと言えます。

さて、どういった用例をスペイン語の中間態として含めるかという問題になってきますが、これは、文法学者のあいだでも諸説あるようです。なかには、受動態すらも中間態に含まれるとする意見もありますし、再帰や相互表現、無人称表現などは中間態に含めないとする考え方もあります(ちなみに、ギリシア語では、再帰表現も中間態の区分に含まれています)。

しかしながら、「能動態」、「中間態」、「受動態」といった「態」という切り口で分類をするならば、能動態、受動態以外のものはすべて中間態として捉えたほうがスムーズで理にかなっていると考えます。よって、ここでは、ある程度最大公約数的な意見を採用して、「非能動態」の用例から「受動態」を除いたものを「中間態」として分類しています。


図中の分類体系は、独自のもので、あくまでも理解を助ける目的で使用しています。中間態自体が、文法的な考え方が定着していない「ゆらぎ」のあるテーマですので、その用語の定義やその分類などを覚える必要はありません。こういう用例があるのだということを感覚的につかんでおくだけで十分だと思われます。また、無人称表現は、再帰的受身から発展した用例であるため、受動態の分類に入れています。

再帰・相互表現
この用例については、スペイン語の再帰表現、および相互代名詞を参照ください。

状態・性質の表現
「車がよく売れる」、あるいは、「本が読みやすい」、「氷は解けやすい」など、主語になる事物の一般的な性質・状態などを表現する用例です。muy bien, fácilmente など程度を表す副詞句とともによく使われます。また、最後の2つの例文では、代名動詞の形を取らず自動詞のみを使って表現していますが、これも意味的に「中間態」に含めることができるでしょう。

Esta ropa se lava muy bien con lejía.
(この洋服は洗剤できれいに洗える。)
El libro se lee muy bien.
(その本は読みやすい。)
El hielo se derrite rápidamente.
(氷はすぐに溶ける。)
El coche corre muy bien.
(その車はよく走る。)
La puerta no cierra bien.
(そのドアはよく閉まらない。)




自発的動作の表現
基本的には「~させる」という意味の他動詞が、代名動詞を用いることで「~する」という自動詞的な意味に変わる用例です。人間、動物はもちろん、「服が乾く」、「地面が沈下する」などの事物についてもその自発的な状態動作を表現します。もっとも、静物である物などは実際に動作を行うことはないのですが、その「物」に焦点を当てて、動作が自分を起点に発生しているような状態を表します。さらに詳しい説明については、自動詞の役割をする代名動詞を参照ください。

なお、ここで使っている「自発」という語の意味は、「自らすすんで」といった意思を表すものではありません。

Pedro se levantó de la silla y volvió a sentarse.
(ペドロは椅子から立ち上がり、そしてまた座った。)
Con el sol y el viento, la ropa se secará rápidamente.
(太陽と風があれば服はすぐ乾くだろう。)
Con el terremoto su casa se hundió totalmente.
(その地震で家が倒壊した。)

意味の変化
「決定する、調和させる」(acordar) が「思い出す」(acordarse)、あるいは「適合させる」(apropiar) が「自分のものにする」(apropiarse) など、単なる他動詞→自動詞とは別の意味が出てきます。また、「眠る」(dormir)が「しびれる、寝入る」(dormirse)のように、もともと自動詞の意味を持つ動詞を代名動詞として使用することで、微妙な意味の変化が出てくる用例もあります(詳しくは、自動詞の役割をする代名動詞を参照ください)。

Acordaron restablecer las relaciones diplomáticas.
(外交関係を築くという協定を結んだ。)―他動詞
Al verle me acordé pronto de quién era.
(彼を見るとすぐに誰だか思い出した。)―代名動詞
Apropiaron el método a las situaciones propias.
(それぞれの状況に応じてやり方を適合させた。)―他動詞
Un empleado se apropió de todo el dinero de la compañia.
(一人の従業員が会社の金をすべて自分のものにした。)―代名動詞
Ayer dormí ocho horas.
(昨日は8時間眠った。)―自動詞
Se durmieron los pies sentandose sobre ellos.
(正座していたので足がしびれた。)―代名動詞




関心・強調表現
代名動詞の形を取ることで、「死ぬ」(morir) が「死んでしまう」(morirse)、「食べる」(comer) が「食べてしまう」(comerse) など、主語となる対象への関心度・強調を表わす用例を言います。強調・感情移入の与格代名詞と併用される場合もあります。

Ya me voy a la escuela.
(もう学校に行くよ。)―単に「行く」ではなく、「今すぐに、ここから立ち去る」
Se le murió su esposa ayer.
(昨日彼は妻に死なれた。)―「死んだ」の強調で「死んでしまった」
Carlos se bebió todo el vino que quedaba.
(カルロスは残りのワインを全部飲んでしまった。)―「飲んだ」の強調で「飲んでしまった」

強制的代名動詞
arrepentirse 「後悔する」、atreverse 「思い切って~する」、jactarse 「自慢する」、quejarse 「不平を言う」といった代名動詞としてしか使用されない動詞を使った表現です。したがって、たとえば arrepentir だけでは使うことができません。

¿Te arrepientes de haber comprado el nuevo software?
(その新しいソフトを買ったことを後悔しているの?)
Él siempre se jacta de saber de todo.
(彼はいつも何でも知っていることを自慢している。)
¡No se quejen ustedes!
(みなさん、不平を言わないでください。)