スペイン語の不定冠詞の特徴
ここでは、主に英語と比較した場合の特徴について述べてみたいと思います。主な特徴として、下記のような傾向が挙げられます。
スペイン語の不定冠詞は存在しない?
こう言ってしまっては、このページ自体が意味をなさないものになってしまいますが、文法学者のなかには、「スペイン語の冠詞とは、定冠詞のみを言い、不定冠詞(
un, una, unos, unas)は数を表す形容詞である」という意見もあります。もともと冠詞というものは名詞を言及するためにできたものであり、その意味では定冠詞だけが冠詞として見なされるべきだというスタンスだと思われますが、なるほど、世の中には定冠詞のみがあり、不定冠詞を持たない言語も存在しています。このサイトでは、スペイン語の冠詞として定冠詞と不定冠詞があるという前提で話を進めます。
不定冠詞を使わずに無冠詞で表現する場合が多い
これは他のロマンス語(ラテン語を親言語とする言語)とも共通している特徴ですが、「私は○○です」など、身分や職業を表す「述語」の部分に使われる名詞には冠詞がつかないのが普通です。あえて不定冠詞をつけると「強調」の意味になります。英語では、
He is a doctor(「彼は医者だ」)と不定冠詞の
a を使うところを
He is doctor と、無冠詞で表現するというわけです。同様に、特定の前置詞の後に来る名詞にも冠詞を使いません。無冠詞の用例については、
無冠詞の用法を参照してください。
不定冠詞に複数形がある
英語の
a、an には複数形はありませんが、スペイン語の不定冠詞には複数形があります。もともと不定冠詞は、「1つ」を意味する単語から派生したもので、「1つ」が複数になるというのも辻褄の合わないような話ですが、スペイン語では「いくつかの」という、英語の
some に近い意味で使われます。
以上、スペイン語の不定冠詞について大まかな特徴を挙げてみましたが、歴史的にも、不定冠詞が生まれたのは定冠詞の後でもあり、「あの○○」、「その○○」など、前述の名詞を指し示す役割を持つ定冠詞と対照させる冠詞として登場したという説があります。英語の例を挙げると、
There is a house. The house is... といった用例がわかりやすいでしょう。
また、「無冠詞」の名詞の用例も多く、複数形もあることから、スペイン語の不定冠詞は果たして冠詞なのかという疑問が生まれるのも無理もないことかもしれません。