1か月半ぶりに帰った実家に棲むモノが…!(続き)

天井に 耳をすませば クルックル

さて、3点セットがまったく効かないヤツらは一体何なのか?

その正体をつかむべく、寝室にしている二階の押入れ(戸はすべて外して使っている)の天井に耳を傾けてみると、どうやら「クルルル…」と高音で喉を震わせるような鳴き方をしている。さっそくネットで検索してみると、なんとそれは

アライグマだった!

ヤ、ヤバイ!

どうりで足音が重いわけだ。

実はアライグマと言えば、もう5年以上も前になるが、生前の母親が「ご対面」したことのあるいわくつきのケモノである。

配偶者といっしょに夏休みに帰省したときのことであった。何やら天井裏がガリガリと騒がしいと感じていたが、その頃はまだ年1回の帰省である。害獣に対する関心もなければ知識もなかった。さらに、母親は耳が遠く「何やら物音が…」程度の認識だったので、こちらもさして問題視することもなかった。

「事件」は我々が京都に戻ってから数日後のことだった。

食事する 母が対面 アライグマ

何か大きな音がしたようだと思った母が、ふと台所から廊下に目をやると、ささっと通り過ぎてゆく黒い影が…。ビックリ仰天、恐る恐る確認してみるとシマシマ尻尾の憎たらしいヤツ。慌てて近くの駐在所に電話して来てもらった。

棲みついていたアライグマは合計3頭、どうやらヤツらのトイレ被害でもろくなっていた天井板を破って落ちてきたらしい。駐在さんは、3頭を捕獲すると道路を隔てたところの川に投げ込んだのだとか。なかなか頼もしい限りだ。その後、私のほうから町役場に相談すると、罠を持ってきて設置してくれたが、この罠がまたまったく効かない。結局1頭もかからないうちに返却したという経緯がある。

ヤバイ!困ったことになったぞ

考えるだけで気が重くなる。最悪のパターンである。これだけは避けたかった。

なんとか出て行ってもらう方法はないか。駐在さんを呼ぼうにも前回のように下に落ちてきたわけではなく、まだ天井裏でドタバタしている状態である。ま、警察風に言ってみれば、「現行犯逮捕」ではなく「あの人怪しそうだから捕まえてください」というのと似ているかもしれない。

役場に相談すればいいのかもしれないが、あいにく今日は土曜日である。電話するにも、あさっての月曜日まで待つしかない。

それまで、このドッタンバッタンに耐え忍ばなければならないのか…!

冗談じゃない!ここは誰の家だと思ってんだ!おまいらの家と違う!

などと言うと、傍から冷静に見ている配偶者がチャチャを入れる。

「向こうは向こうで、自分らの家やと思ってるやろ。『だってオマエいつもいねえじゃん』とか、『名義変更もしてないんだからオマエの家ちゃうやろ』とかね」

「ええい!っるせー!!」

甘い顔すると快適さを感じられてほんとに棲みつかれてしまう。そうなると、トイレ被害ですでにもろくなっている天井板をはじめ家自体が破壊されてしまうのである。こっちも天井をドンドンたたくときには手加減しながらやっているのだ。

では、業者に依頼するか?

この選択肢も悩ましい。

「アライグマ駆除 〇〇町」などで検索しても、表示されるのは、「〇〇町」のところだけ差し替えたプログラムを使った大手業者ばかりで、あたかも地域に根差した安心できる業者のような見せ方をしている。また、そういう業者はたいてい、追い出した後のリフォームが狙いだと推測できる。

実家は古いうえにかなりガタが来ている。しかもやたらと広い。これを駆除、クリーニング、リフォームするとどうなるか、おそらく簡単に100万円を超えるだろう。

冗談じゃない!

こちとら、自慢じゃないがもう1軒実家がある(自慢にはならん)。しかも予算は限られている。できるだけ自力でやるしかないのだ。

それに、いまこの家をリフォームしても意味がない。理由は改めて詳しく述べることにするが、それは、10年以上も前から耳にする「道路拡張」である。それが来れば実家のある場所は立ち退き・建て替えとなる。田舎のことだし、お上のやることだ。「来るぞ、来るぞ」と言いながらなかなかここまで来ないのだが、ようやくすぐそこまで来ている。

だから、いま家をどうこうすることはできない。

つまり、ギリギリまで自力で頑張るしかない。あらゆる手を尽くして立ち退いてもらうしかないのだ!

追い出してもまた戻ってくる習性らしいが、戻ってきたらまだ追い出すしかない。ヤツらも賢く学習能力があるらしい。人間VSケモノの知恵比べだな。それでもやるしかない!

それにしても、このドッタンバッタンだが規則性がない。いきなり、梁の上から飛び降りたのが「ドスーン!」とか「ガッシャーン」とか、下から追いかけ回していても、突然こちらの頭上から「ガシーン!」などという音がしてビックリしてしまう。まったく予測不能だ。

血圧も ぐんぐん上がる バトルかな 

ああ、心臓もばくばくだ。夜も寝ていないのにアドレナリン全開だ。計測してはいないが、血圧もさぞかし上がっていることだろう。こにゃろめ!血管切れたらおまいらのせいだからな!

夜が明けて朝になってもヤツらのドッシンバッタンは続く。

PartiallyCranky60

生まれ故郷の田舎に戻り、土まみれになりながら実家の管理をしてしばらく暮らす。そして京都に戻り仕事や自分のメンテナンスをするという二拠点生活が定着してきた。あっという間に1か月過ぎ、1年が過ぎる。忙しい。とにかく忙しい。退屈しているヒマもない。綱渡りのような生活。大変だが、スリルがあるとも言える。もっと時間が欲しい。