アライグマ奮闘記(1)

二拠点生活―田舎編

戦いは まずは相手を 知り尽くせ

朝になり昼になっても元気いっぱいのアライグマ。一体おまいらは眠らんのか?「夜行性」などと言うがあれはウソか、人間の自己満足なのか、ヤツらが眠る気配はない。それとも、向こうも思いがけず人間が登場して

心臓ばくばく、アドレナリン全開状態

なのか?

いつまでドッタンバッタンするのか?感情的になってばかりでもいけないので、「まず敵を知ること」だと気を取り直していろいろ調べてみる。うんうん、なるほど… ドッタンバッタンはエサをゲットしようとしているわけだな。それとも「交尾」か…?

いずれにしろ、しばらく観察することにした。ヤツらがドタバタしている下でじっと観察(というか、観聴といったほうがいいだろう)する。音の聞こえる方向などから判断して最低2頭 はいるようだ。どうやら1頭はおとなしい性格で、もう1頭は獰猛な性格のようだ。また、これは推測だが、おそらく子供もいるだろう。春は子育てシーズンなのか、一家だんらんのドッタンバッタンなのか、一向に出ていく気配もない。

蚊取り線香もかなり炊いた(家じゅう煙だらけだ)。天井裏への小さな隙間のありそうな箇所から消毒スプレーを吹きかけたりもした。天敵だと言われるオオカミの鳴き声を探してずっと聴かせたり、スマホの周波数アプリをダウンロードしてみたり、ありとあらゆる手立てを尽くしたが効果なし。蚊取り線香はまだあちこちで炊けば多少の効果はありそうだが、オオカミの遠吠えや周波数アプリに至っては気休めにもならない。あるいは、天井裏から遠いので効果がないのか…。

それでも、おそらくエサを探しに「外出」したのか 、1日ほど静かになったこともあった。しかし、なんのことはない、またすぐに戻って来る。 あるときなど、窓から外を眺めていたら1頭が我が家の敷地内を歩いていく後ろ姿を偶然見かけたので、「しめた!とうとう退散か」と喜んだのもつかの間、もう1頭(たぶん獰猛なヤツ)はしっかり在宅(?)で相変わらずガリガリ、ドタバタやっている。

とにかく眠れないので、人間のほうの疲れもピークだ。

このままじゃ下手すると気が狂うかも…!

これはかなりヤバい。精神を病むよりは、多少お金がかかっても業者を呼ぶほうがいいだろう。病気になってしまっては元も子もない。

あるいは、天井裏にアクセスできる「点検口」を取り付けて、そこからバルサンやヤツらの嫌がる唐辛子をはじめパラゾールなどの忌避的なものをどっさりまき散らして撃退する方法をまずは試してみるか。寝ていないが頭はさえているのでいろんな考えが交錯する。

せめてもの「気晴らし」に「アライグマ捕獲」などを扱ったYouTubeのビデオなどを視聴するのもいいかもしれない。なるほど、大事に育てたスイカなどの作物をすべて食べ散らかされた怒りはもっともだ。「なんとしても捕まえてやる!」という執念のもと、ワナの設置や仕掛けるエサの研究を重ねる人、捕まえては猟銃会の人に引き渡し殺処分してもらう人など、いろんな人が投稿している。なんでも、あいつらの好きなエサは「メロンパン」とか「キャラメルコーン」なのだとか(ぜいたくなヤツらめ)…。

そうそう、箱型ワナだけじゃなく、ヤツらの小さな手が入ったら抜けなくなる「アラホール」というワナもあるようだ。このホール(穴)の中にキャラメルコーンなどを入れておくと、食い意地の張ったヤツらは思わず手を突っ込んでエサを取ろうとする。そのタイミングで入り口が閉まって手が抜けなくなるという仕組みだ。手の先はチェーンでつながれているのでどんなにじたばたしても逃げられないのだ。

「あ!しまった!手が抜けないよ~!母ちゃん、助けてっ~!!!」

「おお!アラ太郎、なんてことを!」

「母ちゃ~ん、なんとかして。手が抜けないよ~」

「よしよし、どうしたらいいのかね(オロオロ)」

「母ちゃん、母ちゃ~ん」

「ああ、どうしよう!アラ太郎や、可哀そうに!」(ハグハグ)

などというシーンが展開する(トレイルカメラで撮影した映像)。母子とおぼしき2頭が抱き合ったりしながら、慌てている様子を見るとさすがに可哀そうな気はするが、そんな悠長なことは言っていられない。なかには、ホールにはまった自分の手を食いちぎって逃げる輩もいるのだとか。

ともかく、1歳から子供が生めるアライグマの繁殖力は半端じゃない。このままアライグマが増え続けると、日本は、外国に買われて消滅する前に「アライグマ王国」になってしまうかもしれない(どちらも最悪のシナリオだが)。

さて、そうこうしているうちに、関西のほうでボランティアでやっている通訳の依頼が舞い込んできた。他の人の都合が悪くなったので何とかならないかということだ。

今回はここまでだな

そう判断し、この話に乗ることにした。今回はいったん帰京し「仕切り直し」(?)だ。ヤツらを相手に「負け」を認めるのもシャクなので「休戦」としておこう。

それでも、留守宅を住み着いたままにしておくのも気が引けて、最後の瞬間まで執拗に追い回し追い出そうとしたが、ついに完全撃退には至らず田舎を後にした。

このままで すむと思うな アラ家族

とは言え、もともとは可愛いからと安易に飼ったのはいいが、成長して飼えなくなり捨てた人間が悪いのだが…。

PartiallyCranky60

生まれ故郷の田舎に戻り、土まみれになりながら実家の管理をしてしばらく暮らす。そして京都に戻り仕事や自分のメンテナンスをするという二拠点生活が定着してきた。あっという間に1か月過ぎ、1年が過ぎる。忙しい。とにかく忙しい。退屈しているヒマもない。綱渡りのような生活。大変だが、スリルがあるとも言える。もっと時間が欲しい。