日本語のオノマトペの種類
まず、日本語のオノマトペには、大きく分けて、擬声語、擬音語、擬態語があります。「擬声語」とは人間や動物の声など「生き物」の声をまねたものであり、「擬音語」は非生物の音をまねたもので、「擬態語」は人や生き物、物などの状態や様子を表したものです。
たとえば、「ワンワン」は犬の鳴き声をまねた擬声語で、「カタカタ」というと、たとえば、機械などが動いている音をまねた擬音語、そして、「じろじろ」というと、無遠慮に誰かを見る様子を表す擬態語です。
しかし、日本語のオノマトペがむずかしいのは、そういったものにいろんなバリエーションがあり、それぞれニュアンスや感覚が少しずつ違うことではないかと思います。
「ワンワン」は「ワ」と「ン」を繰り返すことで連続して鳴いている声を表しますが、「ワンッ」と言えば、1回だけ、明快な声で鳴くというイメージになります。そして、「カタカタ」は連続したリズミカルな音を表しますが、「カタン」と言えば1回だけ、深い音がするという印象を与え、「カタッカタッ」と小さな「ッ」を入れることで、音の強調や一瞬途切れる様子などを表現できます。
基本的なオノマトペの構成
では、日本語のオノマトペには、実際にどんなバリエーションがあるのか、その基本パターンをまとめてみましょう。ここでは、2つの異なる文字を重ねたパターンに絞っています。たとえば、ABというのは、A、Bという2つの異なる文字という意味で、「×2」というのは文字通り、2回繰り返すということです。さらに、「tt」は小さな「ッ」、「n」は「ン」、「:」は長い音、「ri」は「り」がつくという意味です。例としては、「痛み」を表す「ずきずき」という語をあげています。
まず、「AB」つまり「ずき」という基本要素があり、それを反復すると「ずきずき」というオノマトペができます。そして、それに「ッ」という促音をつけると「ずきっ」となり、「リ」をつけると「ずきり」、發音の「ン」をつけると「ずきん」、あまり使われませんが、音引きの「ー」で伸ばすと「ずきー」となります。このように、基本となる部分に付加要素をつけることで、いろんなバリエーションを生成することができるわけです。
このように、日本人は、そういった要素の組み合わせをすることで、かもし出される微妙なニュアンスを楽しんでいると言えるでしょう。
付加要素ごとのイメージの違い
表中にも記述してありますが、「ッ」や「ン」などの付加要素の効果や働きをまとめると次のようになります(ただし、人によって異なる場合があるかもしれません。あくまでも一般的な傾向としてとらえてください)。組み合わせる要素 | 印象やニュアンスの違い |
繰り返しや持続、あるいは念押しするような印象がある。 | |
強調や瞬間的な区切りを表す。最後に入ることで、引き締まった感じを出したり、勢いをつけることができる。 | |
音や現象の余韻を表し、浸透するような深さを感じさせる。 | |
長く持続する様子。瞬間的続く感じがある。あるいは、間延びした印象が出る。 | |
動作や状況を「一つのまとまり」としてとらえる印象がある。安定や完成、完了した様子、よりドラマチックな感じを受ける。 | |
では、次のページでは、たとえば「トントン」と「ドンドン」などのように、清音と濁音ではどんな印象の違いがあるのか、または、「パリパリ」と「ポリポリ」といった口の大きさによる違いはどうなのかについてみてみましょう。