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翻訳に基づいた「通弁」クリエイティブ・ライティング

Since 2006. Last update June 10, 2021. Copyright (C) Tuben. All rights reserved.
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ただの翻訳なら機械でもできる?

AIの活用もあってか、いわゆる機械翻訳つまり自動翻訳も、20年前と比べると進化してきているようです。これは、「翻訳は意味がわかればいい」とか「誰がやっても同じ」という方には朗報ですね。

実験してみると…

では、さっそく実験してみましょう。使う翻訳ソフトは、お馴染みの、みんなが使える「無料」がうれしいGoogle翻訳です。

例題はこれです。

例題 1:
たとえ先の見えない重苦しい道であっても、今歩いている道を歩くしかないときもある。何か月何年かかるかもわからず、果たして目的地に着くのかどうかもわからなくても黙々と歩くしかないときもある。しかし、その道を少しでも楽しく歩ける工夫はできる。


これをページに貼り付けて、待つこと1秒もかかりません(この速さは素晴らしいですね!)。そして上がってきたのがこれです。

Example 1:
Even if it is a heavy road with no visibility, there are times when you have no choice but to walk on the road you are currently walking. Sometimes I have no choice but to walk silently, even if I don’t know how many months or years it will take, and even if I don’t know if I will reach my destination. However, you can devise a way to enjoy walking along that road.


いかがでしょう?原文も短く素直な文章なので、意味的に間違って理解しているところもなさそうです。「先の見えない」の部分が物理的に「視界が悪い」という意味で表現されていますが、これも「比ゆ」だと思えばたいして問題はなさそうです。「黙々と」も物理的に「静かな」という表現なのが少し物足りませんが、「だいたいの意味がわかればいい」という人には十分ですね。これだけで判断するのもどうかと思いますので、もう少し続けてみましょう。

例題 2:
飛び込み営業が悪いとは言わないが、個人的には、仕事が忙しいときに「ぜひお話を聞いてください」などと来られると、無下に断るわけにもいかず、結局時間を取られてしまうことになる。「飛び込む」だけでなく、逆に見込み客を引き寄せる営業を考えるべきではないか?


Example 2:
I’m not saying that the diving business is bad, but personally, when I’m busy with work, when I get a message such as “Please listen to me”, I can’t refuse without permission, and it takes time in the end. It will be. Shouldn’t we think of sales that not only “jump in” but also attract prospective customers?


ちょっと「陰り」が見えて来ました。「などと来られる」の部分を I get a message と補ったり、なかなか頑張っているんですが、「飛び込み営業」を the diving business (ダイビング関連のビジネスと勘違い?)としたり、「無下に」の部分は without permission となり、残念ながら外してしまっていますね。日本語特有の言い方やカギ括弧の使い方のクセにそのまま引っ張られています。

例題 3:
ツンと肌を刺す冷気、空を見上げると鋭い月が浮いていた。濁りひとつない紺碧のなかに点在する星くずに目が洗われるのを感じた。


Example 3:
The cold air that pierces my skin, and when I look up at the sky, a sharp moon floats. I felt my eyes washed by the stardust scattered in the azure, which was not muddy.


ここの例題は日本語らしい主語不在の文章ですが、「I」で主語を補っています。通常の翻訳であればしごく当然の処理なのですが、いっそのこと「私(人間)」という主語を使わなくても表現する方法もあります(それはこのページの最後に掲載しておきます)。

その他、ちょっと気になるのが「目が洗われるのを感じた」の部分で、この表現では、比ゆではなく物理的に「洗われた」ような印象を受けますね。そこら辺は機械なので「比ゆ」なのか「物理的に」そうなのかの判断はつきません。この判断をつけられるのは(少なくとも現状では)人間であり、しかもその言語を母国語としているか、深い理解がある場合に限られます。

今後の進化が期待される

以上、自動翻訳がどこまでやれるのかをテストしてみましたが、結論から言うと、けっこう「期待できる」と思っています。もちろん、「普通の翻訳」であればという条件付きです。また、正しい訳をアウトプットするために、機械にわかりやすい日本語に書き直してやる必要もあるでしょう。しかし、今後ますます進化していくはずですし、単なる翻訳なら「これで十分」という時代はすぐそこだという気がしています。英語とヨーロッパ言語間だけでなく、英語と日本語間においても、昔に比べるとかなりレベルアップしているのを感じるからです。

そこに目を付けた翻訳会社さんなどでは、すでに「自動翻訳→翻訳者がチェック→完成」というプロセスで仕事を処理するところも増えてきているようです。そうすることで、もともと安い翻訳料金がさらに安くなり、翻訳者の仕事を奪うという結果になるのは、個人的にはいかがなものかとは思います。しかし、その一方で、人間と技術の進化という視点でみれば、「普通の翻訳」は技術の力で解決するのが理想的だとも考えています。

「普通」や「あたり前」を超えようとするところに人間の進化がある

人間と技術の歴史とは――かつては人間がやっていた「すごいこと」が、技術が進歩することで「(技術があれば)誰にでもできる普通のこと」になる――これの繰り返しだと言えます。かつての人間の特殊技能がもう特殊技能ではなくなるわけです。そうなれば、人間はどうすればいいのかというと、さらに上の特殊技能をめざすわけです。「もう我々の出番はない」などと諦観している場合ではなく、次なるステージをめざすのです。それが人間の進化ですね。

とはいえ、「翻訳」の次なるステージを見つけるのは簡単です。ずばり「ライティング」です。これは、日本人であれば誰でも日本語が書けるのですが、優れたものを書くとなると誰でもできることではないのと同じです。誰がやっても同じではないわけです。文章が下手な人もいれば、優れたライターもいます。

翻訳の文章もそうです。技術によって誰でも「普通の翻訳文」ができるようになることで、初めて、母国語のライティングと同じ土俵に乗ることができるのです。つまり、翻訳者としての次なるステージは、普通の翻訳を脱皮し、翻訳に基づいたクリエイティブなライターをめざすことだとも言えます。そこに、自分だけの感性や創造力が活かされ、自分にしか書けない作品が可能になってくるのではないでしょうか?

確かに、AIを使って「手塚治虫」のマンガが作成できるというような話もありますが、そういうことが可能になったところで、「○○風金太郎飴」的なものが大量生産できるようになるだけで、そこにどれだけの「価値」を見出すことができるのかは疑問です。

では最後に、例題 3の(人間としての)主語を用いないバージョンを紹介しておきます。

A cold, skin-piercing air
Up in the sky is a sharp moon floating
Tiny stars sprinkling in the spotless azure
Seen as if they were cleansing the beholder's eyes


HumanEvolution
(画像はイメージです。)