できれば読みたくない!違和感たっぷりの文章例その2:「舌足らず」な表現が可愛い?(英→日)次は観光案内(奈良の東大寺)の英文を日本語に訳した例です。日本語的には間違いがありませんが、いかにも、最初から日本語で書かれたものではないだろうということが見えてしまいます。「可愛い」んですけどね、確かに。子供向けの本ならまだいいのかもしれませんが、大人向けとなると、やはりちょっといかがなものかと思いますね。「翻訳臭さ」も漂っています。 実際に流通している英語から日本語への翻訳にもけっこう見られる傾向ですが、こうなってしまう原因には、日英の言語の違いを考慮せずに原文の文章単位や単語をそのまま持ってきているからですね。だから、「翻訳臭さ」が残るのです。 「見物者」や「訪問客」という表現もさることながら、日英の語順の違いによる「読みにくさ」もあります。たとえば「日本の、そして、海外からの多くの見物者たちが見逃せない最も人気のある」という部分です。これは「スポット」に係る修飾句ですが、英語では後に来るためすんなりと読み進むことができます。ところが、日本語だと、これがすべて「スポット」の前に来るので、「スポット」が出てくるまでこの情報を頭の中にキープしておかなければならないわけです。こういった箇所がいくつもあると非常に脳が疲れます。 言いかえれば、「日本の、そして、海外からの多くの見物者たちが見逃せない最も人気のあるスポット」という内容を、もし、自分が一から日本語で書くとしたらどうでしょう?もっと違う表現をするはずですよね。律儀に翻訳して不自然な日本語にするよりも、 他のページでも書いていますが、 何も技術文書の数値を変えろとか、事実関係を曲げろなどというわけではないのです。思い切って原文の文章や単語の順序や構造から少し離れて、意味をキープしながら、最初から日本語で書けばいいのです。そのほうが、どれほど日本語らしくのびのびとしたものになるかわかりません。 とは言え、「翻訳者の分際で勝手にアレンジするな」などと考えている翻訳関係者の方もいることでしょう。出来上がったライティングに対して、まるで学校の英作文のようなチェックや指摘をしてこられる方もおられるのは事実です(そういう方には、プロのライターに委託するのではなく、ぜひご自分で作文されることをお勧めします)。 |