できれば読みたくない!違和感たっぷりの文章例その3:気恥ずかしくなるようなバタ臭さ(英→日)次はある商品カタログの英文コピーから日本語への翻訳例です。「翻訳」としては問題はありませんが、そのままコピー(プロモーション用の文章)として使用するには無理があります。創造的な精神とアイデア、革新的な見解と新鮮なアプローチで 様々な高品質の製品を生産してきました。 ひたすらあなたに少しだけでも幸せを感じてもらうために、 ストレスに満ちた忙しい一日からあなたを解放し、 リラクゼーション、快適さと楽しみの瞬間へいざなうために! Creative minds and ideas, innovative views and fresh approaches have produced a variety of high-quality products just to let you feel a little bit happier, bringing you out of a stressful, hectic day into a moment of relaxation, comfort, and fun! それぞれの単語やフレーズも自然に表現されていますが、1つの全体的なピースとして見た場合、自然で最適な作品になっているとは言えません。もし、最初から日本語で書いたとすると、こんな文章にはならないはずなのです。読んでいてどことなく「バタ臭さ」(無理やり西洋風の表現をしているわざとらしさ)が感じられます。 私自身、翻訳会社ではなく広告販促物の制作会社におりましたが、翻訳されたものをそのまま日本語のコピーとして使用することはまずありませんでした。翻訳として上がってきたものを最終的に日本語のコピーライターが一から書き直すことで、日本語の作品として仕上げるわけです。その際に、真っ先に削除されたり、別の表現に置き換えられるのが、日本語で言うと白々しく聞こえたり、「気恥ずかしい」と感じられるような箇所です。 英語と日本語では「表現文化」が違います。たとえば、ドラマなどを観ていても、英語ではことあるごとに(家族にちょっと電話するだけでも) 訳文中の「ストレスに満ちた忙しい一日からあなたを解放し、リラクゼーション、快適さと楽しみの瞬間へいざなうために!」などという書き方は、たぶんに、英語のレトリックだと言えます。英語圏の人だって、たかがホーム・アクセサリーがそこまでやってくれるとは思っていないわけですが、単なるレトリックの1つなのです。それをそのまま日本語に移すとどういうことになるか?――わかりますよね。見え透いたおべんちゃらを延々と聞かされるような「白々しさ」を感じさせるのです。 ですから、「学校の英語の授業」ではなく、日本語市場における成熟した文章にするためには、英語独特のレトリックや表現法は、日本語のものに近づける・置きかえるべきだと考えています。そうすることで、妙なバタ臭さや白々しさ、気恥ずかしさを払拭することができるわけです。 ところが、ここでまた、「ここの原文は『ストレスに満ちた忙しい一日からあなたを解放し、リラクゼーション、快適さと楽しみの瞬間へいざなうために』という意味だと思うんですが、そういう訳になっていません」といったご指摘をいただくことになります。まるで、原文に忠実にやらないライターは「悪人」のようです(笑)。説明するとわかっていただけることもありますが、そういう箇所が多くなるとかなりエネルギーを奪われます。 本社から提供された原文を クリエイティブな発想と斬新な手法から生み出された品質の商品群。 忙しい一日の疲れを癒し、ちょっぴりハッピーな気持ちになれる。 そんな心地よいひとときを演出します。 |