翻訳臭さには「臭いの元」がある
どんな臭いにもその「元」があるように、翻訳臭にも「臭いの元」があります。そして、脱臭剤のコマーシャルではありませんが、その「臭いの元」から断たなければ効果がありません。いったんでき上がってしまった翻訳の臭いのする文章を、いくらネイティブがチェックを入れて手直ししたところで、それは、芳香剤などを使って臭いをごまかしているに過ぎません。
すべて書き直さなければ「臭い」はなくならないわけです。日本人が日本語から英語の翻訳を担当した場合、最終的に英語のネイティブチェックという工程を踏みます。しかし、通常のネイティブによるプルーフ・リーディングではそこまでやってくれません。理由は単純で、料金的に見合わないからです。
ちなみに翻訳会社にネイティブチェックを依頼した場合、その平均的な料金は200ワード1シートで3500円(売り)程度ですが、そのうち、委託しているネイティブ担当者に支払われるのは多くて2000円程度というところでしょう。この料金で、ネイティブライターが文章の書き直しまでやっていたのでは、時間もかかり採算がとれません。わかりやすい翻訳文ならまだ作業はラクですが、読んでも理解不能という翻訳文の場合、冠詞や文法的な間違いだけを修正して納品ということにしなければビジネスになりません。というようなことから、「翻訳の臭い」はそのまま残ってしまうことになります。
では、最初から日本語のわかる英語のネイティブが翻訳すればいいのではないかという考え方があります。最近では「翻訳先言語のネイティブが翻訳する」というやり方が一般的になってきています(この場合、原文を正しく読み取れているかを日本人がチェックします)。しかし、この考え方も少し無理があるようです。英語から日本語への翻訳も、日本語のネイティブがやっているわけです。それにもかかわらず、「不自然な日本語」になってしまうのですから、ネイティブかそうではないかといったことはあまり関係がないと思います。
翻訳臭さはどこから来るのか?
「翻訳臭い」ということは、どういうことかと言うと、その言語らしくない「不自然で違和感のあるもの」が感じられるということであり、それはどこから来ているのかというと、言うまでもなく「原文」ですね。
つまり、「翻訳の臭い」の元は、ネイティブであるかどうかといったことではなく、原文にあるのです。日本語には日本語の言い方があり、英語には英語の言い方があるので、日本語は日本語特有の臭いがし、英語は英語の臭いがします。言い換えれば、英語なのに日本語の臭いがする、日本語なのに英語の臭いがするというときに「翻訳臭さ」として認識されるわけです。
翻訳というプロセスを踏む過程において、知らず知らずのうちに原文の構造やロジック、感性などを持ち込んでしまっているのです。
翻訳臭さを出さないようにするには?
では、この「翻訳臭」を出さないようにするにはどうすればいいのでしょうか?それには、
最初の段階から「臭い」を持ち込まないようにしなければなりません。つまり、原文を読んで翻訳先の文章としてアウトプットするときに、原文の文章構造や表現に捉われないようにすることです。引きずられないようにするのです。一言でこう言っても、実際むずかしいもので、原文に入り込んでいくうちに自然と引きずられてしまうのです。
また、「原文に忠実に訳さなければ」と思うあまりに、単語と単語をつなぐコロケーションなどにも無理が生じて、
単語の使用については正確だが不自然に聞こえるという現象が生じます。これも「翻訳臭」と言えます。さらに、翻訳成果物をチェックする側の態度も重要です。原文ではA+Bの単語の組み合わせになっているのに、翻訳文ではA+B’になっているといった「重箱の隅」をつつくようなチェックを安易にしないことです。コロケーションには、その言語で、あくまでも自然に聞こえる組み合わせというものが決まっているため、無理に原文に合わせようとすると違和感がでるわけです。
原文は大事にしなければなりませんが、その「奴隷」になってしまってはいけません。これは、「態度」といった精神論で解決できないのも事実ですが、「日本語を英語(あるいは英語を日本語)に直す」というのではなく、「日本語(英語)をもとに新しく英語(日本語)の文章を起こす」といった意識が必要です。
このサイトでは、その最も効果的なアプローチとして、単語や文章レベルのユニット変換ではなく、ひとつのかたまりになった情報ブロックとして再構築しながらライティングする
翻訳に基づくクリエイティブ・ライティングを提唱しているわけです。
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