理解しやすさのための論理的思考
英語には英語の「起承転結」、つまり、ロジック(論理)の流れがあり、これに沿っていない文章展開は焦点がぼんやりしたものになってしまいます。読んだ人が「納得!」というのではなく、「わかったようなわからないような…」という印象が残ってしまうのです。
ここで言う「ロジック」とは、いたずらに理屈っぽくなるというのではありません。情報を伝える側と受け取る側との間に「共通認識」のベースをつくるために「ロジック」が必要になってくるのです。
たとえば、ひとつの物事について語るにも、経験や立場によって人それぞれ見方や感じ方が異なります。同じ言葉であっても、解釈やイメージが違います。自分なりの理解や解釈というのは、どうしても「主観」が入ってしまうからです。
それぞれが自分のスタンスに立ったまま、主観的にとらえている言葉を使って議論するとまとまる話もまとまりません。テレビなどでやっている日本人同士の討論をみてもそうです。共通のスタンスや言葉の定義に基づいて議論していないので、ある人は客観的な立場からものを言い、ある人は自分の好き嫌いで考えを主張していたりするのです。
だから、「我々はこういったスタンスに立って話をするのだ、この言葉はこういう定義で使うのだ」という認識を共有しておく必要があるのです。共通の認識があれば共通の思考の流れに乗れるはずなのです。それがないと、何でもありのケンカになってしまい、ひたすら無駄な時間とエネルギーを消費するだけに終わります。これが、異文化とのコミュニケーションであればなおさらです。
そして、その共通認識の核となるのが「ロジック」なのです。言い換えれば、コミュニケーションを円滑にするために必要なのがロジックであり、ロジックの力を借りて、言いたいことをわかりやすく説明することで理解を確立しようという意図があるわけです。
英語圏の人と、何らかのテーマについて話し合ったことのある人なら、思い当たるフシがあると思いますが、ことあるごとに
Why? という質問を投げかけてきます。また、会話の中で、「そういう例が多い」などということを言おうものなら、その「多い」ということについても、「その件数はどれくらいか、何パーセントなのか?」、あるいは「その考え方が正しいということを証明して欲しい」などと追求してきます。
最初はケンカを売ってきているのかと感じたこともありましたが、「あなたを信用していないわけではない。今、自分の目の前に、その情報を提供してくれるソースがあなたしかいないので、それをそのまま信じていいものか判断するために聞いているのだ」と言うわけです。なるほど、これも論理的に考えるという態度の表れだと言えます。
ロジックについては、本文
論理的な英語と理屈の日本語表現で詳しく説明していますので、そちらを参照ください。
また、ロジックに関連して、パラグラフ(段落)の分け方も、日本語と英語では異なります。英文ライティングをする際には、日本語のパラグラフはある程度無視して、英語のパラグラフでくくり直すということが必要な場合もあります。パラグラフについては、同じく、本文
日本語の「起承転結」と英語の「序・本・結」で説明しています。
ビジネスの世界では、メールやメッセージのやりとり、読まなければならない資料、調べなければならないテーマなど、どんな人でも忙しいのが当たり前です。IT の発達によって、あらゆる面でのリードタイムが短くなり、10年前、20年前に比べてもっとあわただしい日々を送っているのが普通だと思われます。そんな状況にあって、よほどのことがない限り、読みにくくわかりにくいコンテンツは読んでもらえません。
情報を発信するせっかくのチャンスなのですから、相手に気持ちよく読んでもらい、できれば何らかの感動を与えたい、良いイメージをもってもらいたい――まずは、そこをめざしたいものですね。
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