ほんのり、しみじみ詩的な世界 >>
「窓の外もほんのり雪景色…」
「窓の外もほんのり雪景色。あの日のことがしみじみと思い出されます。」
説明表現型
"I see lightly snow-covered scenes out of the window. I recollect the memory of that special day, which is slowly soaking my mind."
「ほんのり」といったやまと言葉の優しさは、英語ではなかなか表現できません。「軽く雪でおおわれた」といった現実的な表現をしていますが、もっとイメージ的に、 snow-sprinkled「雪をふりかけた」などの表現も可能です。同様に、「しみじみ」も日本語独特の言い回しで表現しにくいのですが、「ゆっくりと染み込む」というふうに置き換えています。
ただ、この案では、「私」という主体(動作主)を表現した能動態になっているため、原文のような「静かな無人称的」感覚が出せません。たとえば「思い出される」というのは「私が思い出す」というよりは、「私」の意志とは関係なしに頭の中に浮かんでくるというニュアンスがあるからです。
積極表現型
"Out of the window extends a landscape covered with a thin layer of snow. To my mind comes the sweet time we spent together, filling me with nostalgic emotion."
上の例のような「動作主」を表現せず、人間以外のものを主語にしています。それによって、「私」の意志とは関係なしに生じる現象といった感覚が表現できます。
さらに、出だしのような倒置法を使うことで「動的な」印象もなくなります。また、「ほんのり雪」は、「薄い雪のレイヤ」という表現をしてみました。
「あの日のこと」というのは、こういった場合、銀行口座を作ったとか、会社設立の日といった現実的な話ではなく、たぶんウェットな部分だろうと思われますので、「いっしょに過ごした素敵な時間」というふうに置き換えています。
飛躍実験型
"Snow veiling surfaces outside the window,
Bygone days resurfacing out of a shadow,
My heart soaked deeply with sweet sorrow."
より「詩的」な感じを出してみました。無理やりの感も否めませんが、いちおう「韻」を踏んでいます。「ほんのり雪景色」は "snow veil" で表現し、「しみじみ」は日本語では、「染みる」を2回重ねた言い回しであることから、 "my hear soaked" にさらに deeply をつけてみました。また、こういう場合、愛しい「あの日」が過ぎ去ったという「悲しさ」の感情もあると思われますので、 シェイクスピアの "sweet sorrow" (Romeo and Juliet) からそのままいただきました。
以上、いくつかの翻訳例をあげていますが、どれが正解だとか、これしかないというのではなく、あくまでも「表現の可能性」ということでご理解ください。
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