Last update August 9, 2022
英語の冠詞はどこが難しいのか? (1)
広がる冠詞の用法
はじめに――なぜ冠詞が生まれたのか?では、英語の冠詞(定冠詞)が誕生した背景を見てきましたが、そのプロセスをもう一度振り返ってみましょう。
この図のように、that から the になったいきさつは難なく理解できると思います。定冠詞に発展して、
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のような使われ方をするようになった。これも、どの辞書や文法書などでも、まず冒頭で説明されているような内容なので、おなじみですね。次の
Pass me the salt.
Close the door.
Beware of the dog.
も、聞き手にとっても、どの名詞を指しているかがわかるという状況が想定できますので、たいして難しくはありません。
では、どこが難しいのかと言うと、表の中で「広がる冠詞の用例」などと一言で片づけられている部分、ここに難しさが含まれているわけです。文法学者のなかには、この「広がる用例」は、上の用例の後に広がったというより、上の用例とともに最初から存在したという意見もありますが、最初からあったにしろ後から発展したにしろ、日本人にとっては難解な用例であることには変わりはありません。
具体的には、よく辞書などでも目にする
- 「~する〇〇」のような関係代名詞の限定(制限)用法 (the man who built this house)
- 唯一のもの、1つしかないものにつける
- 「犬というものは」など種や属を総称するときにつける
- その他、慣用句やイディオム・ルール化された用例
というような用法ですね。まあ、これも、例文などで慣れていけばさほど難しくはありません。その他、こういう場合は定冠詞をつけるとかつけないとか、慣用句やイディオムの一部としてそのまま覚えるしかない用例もありますが、これもそのまま覚えていけばいいわけです(これはこれで大変ですし、いろんな疑問点もあるかと思いますが、とりあえずここでは触れずに置いておきます)。
じゃあ他にどんな用例があるの?と思うかもしれませんが、これは、実際に自分で英文を作成していると思い当たるフシが多々あります。つまり、定冠詞と言うと、名詞を限定・特定するという機能があるため、「どの名詞を参照しているのかが明確にわかる」(はずの)名詞につくというイメージがあります。
そこで、そういった用例に遭遇するたびに、「ここは、どの名詞なのかがはっきりしているから定冠詞がついているのだ」と考え、自分の頭のなかでその関係性を明確にしようとするわけですが、どうもピンときません。また、それを強引に説明するために、いろんな理屈をこねてみたりします。しかし、その理屈は、その特殊なケースでは通用する(こじつけることができる)かもしれませんが、別の類似するケースでは該当しないこともあり、「なぜ?」「一体どうなっているのか?」と悩んでしまうのです。
次のページでは、そういった「悩ましい」用例を挙げて、それについて考察してみましょう。
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