中英語の文法 (1)
格変化の消滅
古英語は、古英語――こんなに違う古英語の文法で紹介したような格 (case) 変化という特徴を持っていました。そのおかげで、古英語は語順が自由だったわけですが、古ノルド語 (Old Norse) の影響で格変化がなくなります。これが、中期英語へと移行する過程で起きた変化の1つです。
まず、「~は、が」といった主語になるような「主格」 (nominative) や「~を」のような目的語になる「対格」(accusative) の語尾がなくなりました。
下の図は、わかりやすくするために、語尾を強引に日本語の「てにをは」に当てはめて考えていますが、「男は」、「男を」の「語尾」の部分が消滅したわけです。そうすると、主語も目的語も「男」になってしまうため、「主語」が先にきて「目的語」がその後にくるという語順を固定する必要が出てきたのです。
次に、「~に、~のために、~にとって」などを表現する「与格」(dative) も、その部分がなくなってしまえば、名詞の関係性がわからなくなってきます。それを補うものとして、前置詞が発達していくことになります。そして、「~の」という所有を表す「属格」(genitive) の語尾は、現代と同じ「's」の形に統一されます。
ちなみに、上の図の単語 guma (「男」)の属格語尾は guman という「n」になっていますが、古英語の格変化のパターンには2つあり、この単語とは異なる engle (「天使」)などの単語の属格であるengles の「s」をもとにしているわけです。
さらに、名詞の性 (grammatical gender) や単数複数の数、格ごとに異なった「定冠詞」も必要がなくなり、いずれは the に統合されていきます。
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