日本人は英語がヘタ?中学、高校、大学と勉強していながら話せないのはなぜ?通訳付けないと日常会話もできない首脳は日本だけ?ともあれ英語は世界語になることは間違いなさそう。ここでは「日本人が英語が苦手なわけ」を分析してみたいと思います。


Last update January 8, 2019

赤ちゃんは語学の天才? (2)

よく「外国語を学ぶときは子供に戻ったつもりで学ぼう」などと言われますが、理屈のうえでは「一理ある」と言えるでしょう。あなたの家族やまわりに赤ちゃんがいる人はよーく観察してみてください。

「これはイヌさん」「これはネコさん」「はい、正解。ピンポーン!」などと話しかけていると、言葉を覚えようとする時期にある赤ん坊はあなたの口元をじーっと見ているはずです。そしておもむろに「ピンポーン」などと真似てみたりします。

そうです、唇の形を見分けようとしているのです。視覚的に口の形をとらえながら、耳で音を確認し、自分で発音してみることによって自然に母国語の発音を身につけているのです。もう何十年もこの世にいると、自分が言葉を覚えようとしていた頃のことなど、思い出すすべもありませんが、まわりの赤ん坊を観察することによって、自分も誰に教えられるともなく、このようにして自然に言葉を覚えたんだなあ… と不思議な驚きがあります。

ところが、大人がこれをやって英語のリスニングなどの能力が身につくかというとちょっと疑問です。何を隠そう筆者も以前は、「それは可能ではないか」と期待していたのですが、最近になって、「やはり無理だろう」という結論に達しました。というのも、赤ん坊の脳と大人の脳は違うからです。音を聴くと言っても、結局、聞いて理解するのは「脳」ですから、ある「音」を聞いて、その音を正確に取り込めるかというと疑問が残ります。大人の脳は赤ちゃんの脳と比べて柔軟性が低いのは確かです。

前のページでも書きましたが、赤ちゃんでも、この世に半年も存在し続けると、自分の言語に関係のない音の区別はできなくなってくるわけです。生後6か月の赤ん坊にできないことを何十歳にもなった大人ができるわけがありませんね。だから、日本人が日本語にない [ r ][ l ] の音が聞き分けられなくても当然のことなのです。

よく英語を教えている英語圏の人たちが、「日本人は [ r ][ l ] の音を区別できない」などと言っていますが、それは仕方のないことだということです。それを必死で「るー」とか「ルー」などと発音してみせても聞き分けられないものは聞き分けられないのです。





そういえば、初めて英語を習うようになった中学1年生のころ、英語の先生が口元を本で隠して「るー」とか「ルー」と発音して、生徒にどちらかを答えさせるというクイズをやっていたことがあります。他の生徒は適当に答えて「正解」したりしていましたが、私にとっては「どっちかわからない」というのが正直なところでした。

音の違いに対して「こうだ!」という手ごたえがつかめないのです。先生の個人的な発音のしかたや「 [ r ] が続いたから今度は [ l ] だろう」程度の「ヤマ感」でしかなかったような気がします。

もっとも、単語の先頭にくるか、他の音との組み合わせによって、区別しやすい例もあります。しかし、逆に、音の組み合わせによっては区別できないような場合もあるのです。つまり、母国語にない発音は聴き取れないという結論に達するわけです。


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