スペイン語文法ノート 英語なら the しかない定冠詞もスペイン語では全部で5種類。男性名詞、女性名詞、単数、複数、さらに中性定冠詞というものも…。ここでは、そもそも定冠詞の役割は何なのか?―といったことも含めて、スペイン語の定冠詞の特徴を押さえておきましょう。




スペイン語の定冠詞の特徴4

Última actualización: 13 de septiembre 2018


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Stage 1 の特徴 (2)



  1.提示のための名詞の特定
これは、指示詞から定冠詞が誕生したときの基本的な特徴と言えます。「定冠詞のライフサイクル」でも少し触れましたが、特定の単数名詞を指示する用法ですね。この用法では、正しい情報伝達のための必要性も高く、参照する名詞も聞き手にとって簡単に特定できるものになっています。

これを分類すると、大きく「文脈内参照(エンドフォラ)」(Endophora)と「文脈外参照」(Exophora(エクソフォラ))に分けられますが、前者は、参照する名詞がその文章の前後に含まれていて聞き手(読み手)が簡単に見つけることができる用法で、後者は、実際にその周辺の文章には登場しないが脈絡や状況から何を指しているかがわかるという用法です。

エンドフォラの典型的な用例は、Compré un libro. El libro es...(「私は本を買った。その本は…」)というときの el ですが、こういった用法をアナフォラ(前方照応、Anaphora)といいます。もう1つエンドフォラの用例として、カタフォラ(後方照応、Anaphora)がありますが、これは、Compré el libro que me recomendaste el otro día.(「キミが勧めてくれた本を買った」)というふうに、定冠詞のつく名詞の内容が文章の後に出てくるような例です。エンドフォラは最もわかりやすい用法ですね。

それに比べてちょっとわかりにくいのが、エクソフォラの用法です。それ以前の説明もなく、Pásame la sal, por favor.(「塩を取ってくれ」)とか、¿Te gusta el presidente de tu país?(「キミの国の大統領ってどうよ?」)というような場合ですね。聞き手にとって、どの「塩」を取ればいいのか、あるいはどこに「塩」があるのかがわかりますし、「キミの国の大統領」と言われれば一人しかいませんので、誰のことかわかるというわけです。つまり、共通の知識や認識によって、どの名詞を指し示しているかが連想できる用法です。

  2.名詞の参照の範囲を設定
最初は「単数の名詞」を参照していた定冠詞ですが、そのうち「複数の名詞」も参照するようになってきます。言い換えれば、それまでは、「この名詞」というふうに(範囲を狭めて)限定していたわけですが、それが「ここまでの名詞群」を指すというふうに、範囲を広めて限定するわけです。たくさんあるもののなかで、該当するものをすべて「定冠詞」でくくるというふうに考えることもできます。たとえば、El hombre es mortal(「人は死ぬものだ」)というふうに、「その種類全体」を参照するような用法です。

  3.名詞の属性を伝える
これは、「定冠詞のライフサイクル」の Stage 3 の「名詞のマーカー」としての段階につながる特徴ですが、名詞についている定冠詞によって、その名詞が単数なのか複数なのか、そして、男性名詞なのか女性名詞なのかという「属性」がわかるということですね。スペイン語の母体となった俗ラテン語でも、消失した名詞の格変化を補うために役立っていたようです。つまり、ラテン語では名詞の格変化によって、「格」情報以外にも、その名詞が単数であるか複数であるか、男性名詞か女性名詞かを知ることができたのですが、俗ラテン語では、格変化がなくなり、そういった情報が入手できなくなったため、スペイン語の定冠詞のマーカー的特徴を利用したわけです。

  4.あいまいな用法
この役割は、一言で言えば「グレーゾーン」的な領域です。たとえば、本などを読んでいて重要なところに下線を引く場合がありますが、下線を引いているうちに「それほど重要なないかもしれないが、とりあえず印をつけておこう」という感覚に似ていますね。つまり、次のような場合です。

・定冠詞の用法――なぜ定冠詞がつくか――という理由があいまい
・定冠詞の代わりに不定冠詞を使ってもいいのではないかというためらいがある
・あるいは、不定冠詞を使うと「登場感」が出てしまうが、そこまで強調したくない(他に選択肢がないので定冠詞を使う)
・なぜ定冠詞なのか説明はできないが、習慣的に定冠詞がついている
・その他

人によっては他の分類に含めることもあるかもしれません。また、後の「5.ルール踏襲のための用法」とオーバーラップする部分もあるかもしれませんが、日本人にとっては「理由はよく理解できないけど何となく定冠詞」、ネイティブの説明を聞いても個人によって理由が違う(要はあいまい)といった用例が該当します。「ゆるく」限定・特定すると考えてもいいかもしれません。実際に文章を書く練習を重ねて感覚で習得するしかない部分とも言えるでしょう。

  5.ルール踏襲のための用法
Stage 1 の特徴 (1)」でも述べましたが、人々が使っているうちに用法が拡大し、「ここで使うならあそこにも」といった用例の統一やルールを守るための使用によって確立した用例を指します。たとえば、川や海につく定冠詞や「何時」というときの時間や年齢、イディオムで使われる定冠詞など、こういった用法は長い年月をかけて確立したものなので、「なぜそうなのか?」とか「いつからそうなったのか?」という理由や背景をいちいち調べることは不可能に近いものがあります。よって、こういった用法は1つ1つそのまま覚えるしかありません。

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