再帰代名詞の役割
再帰代名詞を使うことで、自分自身や自動詞的な意味を出すことができるということを述べましたが、三人称の再帰代名詞である
se を使った受身的な用法もあり、非常にわかりずらくなってきます。
そこで、まず、再帰代名詞の用法の傾向を大きく捉えておくことで、理解がしやすくなります。
図のように、三人称の
se のみを使った用例と、一人称~三人称(単数・複数を含む)のすべての人称を使う用例の2つの流れに分類することができます。このうち、
再帰的受身と無人称表現の用例では、三人称
se のみしか使われません。それに対して、すべての人称を使った用例では、再帰表現をはじめ、自動詞的な意味合い、強調、ニュアンスの違いなどを表す用例が含まれます。この用例については、
スペイン語の中間態で説明しています。
それぞれの用例について、再帰代名詞がどのような役割を持っているのかという特徴をまとめてみると、次のようになります。
三人称の se のみを使った用例 |
すべての人称を使った用例 |
行動主から視点をそらす。
→行動主は主語ではない。
行動主を言及しない(不明、あいまいにする)。
→se は言及しない行動主の心理的な代用。
能動性を弱め、受身化・無人称化する。
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行動主自身に動作が影響する。
→再帰表現
他動詞から自動詞的な意味への変化。
内面的な性質などを表現する。
能動性が弱まり、静態化する。
動作の強調、影響度の高さが出る。
意味やニュアンスの違いが出る。
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動詞の最もアクティブな形は能動態であり、目的語を伴い、その目的語に対して動作の影響を与える他動詞だと考えることができます。ところが、再帰代名詞が加わることで、「再帰」→自分へ戻るということから、動詞のアクションの方向性も外から内側へ向きます。動詞の意味も内面的になることから能動性が弱まり、自動詞に近いものになっていきます。能動態の主語である行動主から視点がそれて、主語が不明・あいまいな存在や受動主に移行します。
言いかえれば、能動態からいわゆる
中間態というものに移行し、能動態でもなく受動態でもない、微妙なニュアンスを持たせるような傾向が出てきます。さらに、能動性を弱めていくと受動態になります。また、三人称の
se は、行動主を言及しない
再帰的受身を構成するため、行動主の不在
→人の不在
→無人称表現というふうに、無人称化の方向へと進むわけです。
こういった流れを頭に置いておくことで、三人称の再帰代名詞である se の用法についても理解しやすいのではないかと思われます。