区切られた時間と区切りのない時間
以上のようなことから、「点過去」とは、出来事の開始を記述するのに使われるため、「時間の区切り」が明確であるということができます。
これは、たとえば、「何年何月何日の何時」というふうに物理的な時間がはっきりしているという意味ではなく、あくまでも、話者の心理のなかで「明確」であると考えるわけです。つまり、時間的な基準を置く―出来事の開始時点を表現しているということです。
それに対して、「線過去」とは、「そのときどうだった」ということを表現するため、「時間の区切り」はあいまいで、どこが開始時点で終了時点なのかは明確ではありません。これは、話者が記憶として覚えていないということではなく、語る内容として、時間の区切りは問題にしないということを意味しています。
さらに言えば、「時間の区切り」がはっきりしている「点過去」では、継続しない事柄や完了した事柄を述べる場合に使用し、逆に、「線過去」は、習慣や継続されている事柄、あるいは、まだ完了していない事柄を述べるという使い分けが成り立つわけです。
多少乱暴ですが、イメージ的には、
点過去→絶対的な時間、はっきりした時間、メインの出来事、強い過去の時間(出来事)
線過去→相対的な時間、あいまいな時間、サブの出来事、弱い過去の時間(出来事)
といった図式が成り立つといえるでしょう。