絶対時制と相対時制
次に、点過去と線過去の「時制」の種類について考えてみたいと思います。
「点過去」と「線過去」の比較表のなかでも記述していますが、点過去は「絶対時制」であり、任意の過去の絶対的な時点を表します。言いかえれば、時間の基準を置かない出来事や後に続く説明的な文章に対して「基準となる時制」を導入するということができます。一方、線過去の時制は「相対時制」です。よって、ある基準となる時制(例:点過去で導入された絶対時制など)に対して関連する時制だと位置づけることができます。
「相対的」というからには、どこかにその基準となる時間を表す「前提」があるというわけです。一般的な用法として、「点過去」で絶対的な時制を導入し、それを基準として、相対的時制を用いて「線過去」で説明などを加えるという方法があります。ですから、上の項で挙げた例文では、視点を置いた出来事を点過去(水色マーカー)で表現するため、これが絶対時制となり、それを基準として、付随する出来事の時間を相対的に線過去(黄色マーカー)で表現しているわけです。
Llegaba a casa cuando sonó mi movil.
Sonaba mi movil cuando llegué a casa.
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また、下の文章のように、点過去で過去の出来事を導入し、それを基準に、線過去で説明や描写を加えるという例もよくみられます。
Entró una mujer en la tienda. Ella estaba apresurada y buscaba a alguien.
(ある女が店に入ってきた。彼女は急いでいる様子で、人を探していた。)
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ちなみに、線過去は、別のスペイン語で
copretérito (
co- 「共に」 +
pretérito 「過去」)とも呼ばれ、「他のものといっしょに過去になる」という意味合いが含まれます。この呼び方が示すように、線過去は、何らかの時間を基準として使用されるということを前提にしているといえます。